こんにちは!ダイバーラウンジです。
年末に書くべき内容でもない気がするのですが、時々SNSとかで「ダイビング中にグローブは着けるべきか、着けないべきか」に関する意見を見受ける様になった気がします。
これは3年前に大瀬崎で撮った僕の写真になりますが、グローブめっちゃ着けてますね。「着けるか着けないか」で言うと、僕は「着ける派」のダイバーということになりますね。
このグローブ着けるべき着けないべきについては、色んな方の色んな方向性の意見を見るのですが、グローブそのものの良し悪しというより、そもそもそんな意見を聞く様になった原因にこそ問題があるのではと何となく感じております。
ちょっとそこを掘り出して、改めて僕たちダイバーが気を付けなければならないことについて考えたいと思います。
この記事の目次
Green Finsという取り組み
グローブの話をするにあたって、まずご紹介したいのがGreen Finsという取り組み。
Green Finsはイギリスの財団であるケニアに本部を置くThe Reef-World財団とUNEP(United Nations Environment Programme、国連環境計画)が共同で始めた取り組みです。
ダイビングやシュノーケリングといったマリンスポーツによってサンゴ礁やそこに住む生態系といった海洋環境にネガティブな影響を与えないように、マリンスポーツにおける「国際的なガイドライン」を作ろう、といったプログラムです(参照元はこちら)
もう既に世界で700を超えるダイビングショップでこの基準が導入されているのですが、日本では沖縄の恩納村が積極的に導入を行っています。
日本初!沖縄県恩納村がグリーン・フィンズ(Green Fins)導入〜協力ダイバー(アセサー)募集中〜(オーシャナ)
恩納村での導入自体は2020年と4年も前に既に開始していて、上のオーシャナさんの記事を読んだ時に「どんなガイドラインが設定されるんだろう?」と思って見てみたんです。
これは恩納村のWEBサイトからダウンロードできるGreen Finsのアイコンです。
「おみやげ」が「おやげ」になってるとか細かい点は一旦置いといて、大体の項目は確かに普段から「気を付けないとだよね」でよく挙がる項目だな、と思いながら眺めていたのですが、
この項目で「ん???」ってなる。
え、僕全然グローブ着けてるんだが???この項目だけすごく引っ掛かる。
最初は「グローブが海中でちぎれたりしてその布が海洋汚染につながるとかそう言う話なのかな」と思いながら詳細を見てみました。
そっちか。
グローブをする
→無意識にサンゴとか触ってしまう
→触ってほしくないからグローブごと禁止にする
という考え方のようです。
このガイドラインを初めて見た時の正直な感想が「???」だったのが、グローブを着ける着けないの話を考え始めたきっかけでした。
グローブを着けない利点、着ける利点
当初はこのガイドラインに対して正直「いやいやいや・・・」と思いながらネットとか眺めていたのですが、こうした意図での「グローブは着けるべきでない」意見は、それ以降よく見るようになりました。
特に欧米出身のダイバーさんで同様の理由でグローブを着けずに潜られてる方が多くいらっしゃる印象があります。
なので「この意見は少数とかではなく結構あるんだな」と思うようにはなったのですが、とは言えこれに対して理解はすれどもハッキリと納得は出来ず、現在でも悶々とした気持ちが抜けていません。
ので、改めてこの話について考えてみようと思うのですが、まずはダイビング中にグローブを着けない利点、逆にグローブを着ける利点を洗い直したいと思います。
グローブを着けない利点
海洋環境(サンゴ、生物など)への余計な接触をしなくなる
Green Finsのガイドラインにも書かれている内容ですね。
グローブを着けないということは、ダイビングをしている間、海洋環境に対して両手は丸裸、ということになります。
生き物を刺激したら攻撃されるかもしれないし、サンゴや岩場は硬いし、ガンカゼやイイジマフクロウウニにオニヒトデなど、毒のある生き物だって存在する海洋環境。そんなリスクがあるとなれば、グローブで守られていない分、無闇に触ろうという気は起きなくなります。
このことでサンゴや生き物などの海洋環境への余計な接触を少なく、或いは無くすことが出来ます。
中性浮力などのスキル向上に繋がる
「海洋生物に余計な接触をしなくなる」に関連しますが、海洋環境への余計な接触を避けるためには、それに近づかないようにする必要があります。
極力海底に体を着底させず、サンゴや岩場からもある程度距離をとる。一方で離れ過ぎても意味がない。つまり中性浮力が上手くならないことにはこれが実現できません。
そうしたダイビングスキルの向上に、結果的には繋がりやすくなります。
器材やカメラの操作がしやすい
グローブを着けていると、その分手を使った細やかな動作はしにくくなります。
ダイビングしてる間はBCへの空気の出し入れなどの器材の操作だったり、撮影をする際のカメラの設定や操作だったり、色々と手でいじりたい時って多かったりします。ものによっては繊細な操作が必要になる時もあります。
そんな操作をしたい!って時に、正直グローブ自体がたるくなる、ってことがあるわけです。実際そういった理由で素手で潜る一眼ユーザーのダイバーさんをよく見ます。
グローブを着ける利点
海洋環境によるケガから手を守れる
グローブを着けない分、自分から無闇に海洋環境に接触する気がなくなるだろう、というのは前述の「グローブを着けない利点」で書きました。
とは言っても海洋環境も生きてる世界なので、こちらにその意志が無くとも向こうから接触してくる可能性もあります。
自分の巣を守る攻撃的なゴマモンガラ、死角から突然飛んでくる毒クラゲ、その他何かしらの浮遊物が飛んでくる場合もあり、自分へ思わぬ危害を加えてくるかもしれません。
グローブを着けていれば、そうした思わぬ接触・危害によるケガから手を守ることができます。
アレルギーから手を守れる
思わぬケガにしてもそうですが、海に浸かることは思わぬアレルギーを引き起こす危険もあります。
特によく言われるのはプランクトンアレルギー。海水浴でよくやられる「チンクイ」とかもそうですが、エビやカニの幼生などが皮膚を刺激することで赤いブツブツやかゆみなどの症状を引き起こします。
海水そのものにアレルギーがある場合もあるし、肌をさらすだけで思わぬ症状を引き起こす可能性があります。グローブをしていれば、そのリスクから手を守ることができます。
保温になる
ダイビング中に突然体調が変わったり減圧症などの症状を引き起こさないために重要な対策の1つに「身体の保温」があります。
陸でもそうですが、手が冷えるとほんと、何も出来なくなりますよね・・・
グローブの保温性はその状態から自分の手を守ってくれる役割も担ってくれます。特に日本は秋〜冬〜春にかけて水温の低いダイビングポイントもあるので、手を余計に冷やさないためにも保温対策は大事です!
ダイビングで守るべきものとは?
ダイビングでグローブを着けない利点、着ける利点について挙げてみました。
こうして並べてみると、それぞれに特徴があるのが見てとれます。
グローブを着けない利点は、手でカメラを操作しやすいなど利便性関連のメリットもありつつ、大きくはサンゴや生き物などの海洋環境へのメリットに重点が置かれています。
一方でグローブを着ける利点は、身体をケガや寒さから守るなど、ダイバーの身体的な安全性へのメリットに重点が置かれてます。それぞれ重きを置いてる箇所が違う感じですね。
ダイバーの安全性を考慮しないダイビングはあり得ない
この特徴をどう考えようか難しいところなのですが、大前提で考えるべきだと思ったのは
ダイバーの安全性を考慮しないダイビングはあり得ない
ということ。小見出しまんまです。
陸のように呼吸ができない海の世界を40分〜1時間散歩し、無事に帰ってくるまでがダイビング。その間に事故が一切起こらないこと、安全管理が何より大事になってきます。
ダイビングの安全性を上げるためには事前からの健康管理、安全のためのダイビングスキル向上といった取り組むべき点がありますが、安全ダイビングのための装備を揃えることもまた大事です。
そういった面から見ても、思わぬケガから身を守り、保温性も高めるグローブを一概に「不要」とは言いづらいのではないかと考えています。
サンゴや生き物には触らない、は当たり前
ダイバーの安全性を考慮するのは大前提として、ではグローブを着けない利点が重視している「海洋環境へのケア」は無視しても良いのか?というと、そういうわけではありません。てか、これを守ることもまた、ダイバーとしてごく当たり前のこと。
サンゴやイソギンチャクは生き物の隠れ家であり住居でもあるので、それを破壊するのは生き物の定着を妨げてしまうことにつながります。
生き物への無駄な接触でストレスを与えることも、生き物がその場から離れたり隠れてしまったり、これまた棲みつかなくなってしまうこともあり得ます。攻撃的な生き物であればそれで攻撃し返されることで思わぬケガに繋がることも。
環境保全的にこうした所作がNGなのはもちろんですが、一緒に行ったダイバーさんがその生き物の写真を撮るチャンスを逃したり、後日同じ場所に行ったダイバーさんがこの生き物を観れずに終わってしまったりと、ダイビングというアクティビティを継続して楽しむためにも大事なルールなんです。
海洋環境に無闇に手を触れる、ダメ絶対。
あれ?両方とも大事じゃない?
そうなのです。
グローブ着けない側で重視されている海洋環境へのケア、グローブ着ける側で重視されているダイバーの安全性のケア、結局どっちも大事なんです。なんか一見対立してるこの2項目、対立しちゃいけない項目になるんですよね。
「え、じゃ結局どうすればいいのよ?」ってなっちゃいますよね。実際そこから先が意見が割れてますもんね・・・
ちょっとここから先は個人的な私見を書いていこうと思います。
グローブ着けるべき着けないべき議論に思うこと
まずグローブを着けるべきか?着けないべきか?で言うと
バリバリ着ける派です。
理由としては利点にも書かれている「海洋環境によるケガから手を守れる」個人的にもとても重要視しているからです。
もちろん、「海洋環境に無闇に触れるわけではない」には賛成です。賛成なんですが、それでも致し方なしで触らなければならない場面、そして前述しましたが「こちらにその意志が無くとも向こうから接触してくる」場面があると考えています。
やむを得ず触らなければいけない場面
海洋環境内のものをやむを得ず触らなければいけない場面って何ぞやってところなのですが。
僕が遭遇したことある例で言えば、粟国島の激流が挙げられます。
これは以前粟国島に潜りに行った際のエキジットする時の映像ですが、自分の吹いた泡が全然向こうに吹っ飛んでいってますよね。この時のダイビングは終始凄まじい激流が来ていたのを覚えています。
ルートによっては目的地に辿り着くのにこの激流を逆走する必要があります。自力じゃキッツイ。こればかりは海底の岩を掴みながらでないと進むことは出来ません。実際ガイドさんにも「流れヤバかったら岩を掴んで進んでください」というブリーフィングがあるくらいです。ちょっと油断して手を離せばすっ飛ばされてあっという間に流されちゃうので、そりゃ素直に掴みに行かざるを得ません。
さらにダイビングポイントによってはロープを使っての潜降、ないしはエキジットをマスト感高めで求めてくる場所もあります(パッと思い浮かぶ限りでは前述の粟国や、西伊豆の田子の外海とかがそうです)。
そういう場所ではロープを触らざるを得なくなりますが、そこそこの期間張られているロープにはかったくて尖っているフジツボなんかが付着してたりします。素手でうっかりそれを触ってしまったらケガ必至でございます。
こうした状況から手を守ってくれるグローブという存在は貴重だと思うんですよね・・・
こちらにその意志が無くても向こうから接触してくる場面
全然こっちから無闇に接触するつもりもないのに、向こうから接触してくる場面というのも考えてみます。
これも僕が遭遇したことがある例で言えば、伊戸のシャークスクランブル!
スーパーで激安アイテムを争う人々の如くサメがごった返してるという圧巻な光景でお馴染みの房総半島(千葉)のダイビングポイントで、既に4回くらいは遊びに行ってる大好きなポイントです。
サメにガツガツぶつかられはするものの滅多にこちらに危害を加えないドチザメの大群なのですが、実は一度だけ指をがっぷり噛まれたことがあるんです。
他のポイントと比べて珍しく(ちゃんと背景があった上で)餌付けによって成り立ってるポイントということもあって多分浮いてるエサか何かと勘違いされて噛まれたっぽい。
ドチザメは一般的に人喰いザメとされるホホシロザメやイタチザメと比べても歯は鋭くないのでそもそも大事には至らないので、この時もシャーペンの芯でプスっと刺したような小さな傷が2箇所人差し指についてる程度で済みました。
ただ、この時グローブ着けてたんですよね・・・グローブを着けてない場合、もうちょい傷大きくなってたかもなぁと思ってます(それでも大した度合いではないものの)
この例は危険度としては非常に低い例になりますが、海にはゴマモンガラのように強靭な歯を持ち、繁殖期に自分から近づいて攻撃してくる生き物もいますし、海底の砂に隠れてる毒針を持ったエイとかもいます。近付かなければいいと言ったってダイバーの視界は限られてますし、すべてを予測して回避するのは難しい危険がたくさんいます。
そんな中でより安全性を高めるためにグローブを着けるというのも、やはり選択肢の1つとして全然あり得るかなぁと・・・
グローブを着けるべきでないという意見が出る理由
こうしたシーンを考えると個人的には安全なダイビングのためにもグローブは着けるべき・・・もっと緩く言えばグローブを着けるという選択肢は許容されるべき、と考えています。
グローブを着けない利点として挙げられているのは、ある意味ではこうした安全性をグローブに頼らずスキル向上に全振りしてでも海洋環境を保護しよう、というメッセージに受け取っています。
スキルは常に向上を目指すべき、という意味では正しい方向性のようにも感じますが、どうしても「車の運転で周囲に危害を加えないためにエアバッグを無くそう」という少々スパルタ感のある形にしか現状受け止められていないです(あくまで個人的に、ですが)。
とは言えこうした「グローブを着けるべきでない」という意見は、前述の通り1人とか2人の意見ではなく多くのダイバーさんの意見として出ているのもまた事実です。そして重要なのは「着けるべきでない」と考えてるダイバーさんは、ダイバーの安全性についてないがしろにしているわけでは決してない、ということです。グローブがダイビングの安全性を高めることは、この方々も分かっていらっしゃるんです。
それでもこうした意見が出てくるということは、それだけ「(グローブによって)無意識にサンゴや生き物に触ろうとするダイバーが多すぎる」という現実があるから、ってことなんでしょうね。
何度も言うけど、サンゴや生き物に触らない、は当たり前
もう一度繰り返しになりますが、ダイビングの安全管理は大前提で徹底しなければいけない、と同時に
サンゴや生き物などの海洋環境に無闇に手を触れる、はダメ絶対です。
これはグローブを着ける着けない、全く関係ありません。
エアバッグがあろうが無かろうが車の運転で周囲に危害を加えてはいけません。同様に、グローブを着けようが着けなかろうが、海洋環境に危害を加えてはいけません。
これはもうグローブを着けるべきとか着けないべきとかそれ以前の話であるべきで、自分だけじゃないすべてのダイバーがダイビングを楽しむために守らなければいけないルールです(理由は前述)。1ダイバーとして改めて意識したいところだな、と思っています。
とは言え「予測不能の事故に備えて車にエアバッグは装着すべき」とも思うので、やっぱり自分はグローブは着けたいと思うダイバーです。
最低限のルールは守りつつ個人の判断で
こんな感じで僕はダイビング中にグローブは「着けた方が良い」と思う人ですが、グローブを着ける着けないは結局ダイバーさん個々人の判断で良いと思っています。
先述しましたが一眼ユーザーとかのダイバーであればより細かい設定や操作ができるように素手で行きたいと思っているかもしれませんし、手の保温が必要がない暖かい海でアレルギーの心配もないのであればグローブをする必要もないかもしれません。
この辺りの判断基準はダイバーそれぞれの考えに委ねていいんじゃないかな、と思っています。
そして「委ねる」ということはその人の判断を尊重することを意味するので、周りのダイバーがどっちを選んだとしてもその判断に文句を言わないこともまた肝心です。
ただダイビングポイントによっては、国立公園やその地域の方針によってグローブの着用禁止で案内される場所もあります。遊び場には遊び場独自のルールがあるのは当然ですし、そのルールに敢えて反抗し自分の意志を貫く・・・的な行動を取る必要はありません。素直に従ってグローブを外してダイビングを楽しみましょう。
そしてグローブを着けてOKな場所であってもサンゴや生き物に無闇に触らないようにしましょう。自分がダイビング中にうっかり無意識にやっていないか、改めて再確認してみると良いかもしれません。
これはただの思い付きですが、無意識に触っちゃってるダイバーさんが多いのであれば、ブリーフィングで「ロストをしたらどう動くべきか」と同じくらいの頻度でサンゴや生き物に触らないなどの注意事項を伝えても良さそうだなと思いました。
ダイバーの安全も海洋環境も、気にすべきことはちゃんと気にして、ダイバーみんなが気持ち良く楽しめる世界を目指していきましょう♪
てなわけで今回はここまでです!
お読みいただき、ありがとうございました^^
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