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海洋プラスチックごみ問題について考える。

こんにちは!ダイバーラウンジ です。

 

今回は、クソ真面目に海プラ問題について書いてみようと思います。

 

打ち上げられたクジラの体から大量のプラスチックごみが出ていた衝撃的な写真などをきっかけに、去年から世界では海洋プラごみ問題がかなり大きな話題として挙がっていますよね。

世界の経済情勢について議論するダボス会議G20でも、2019年はこのテーマが話題の中心をかっさらっていたようです。G20大阪では共同宣言が出されていたほど。それほどまでに注目を集めています。

 

この海洋プラごみ問題、どんな問題なのか?なぜこれほどの量のプラスチックが、海に流れ出してしまっているのか?これからどんな解決策が考えられるのか?改めて考えてみました。

 

一から十から調べようとしたら大学のレポートやら卒論やらのレベルになってしまいそうなので、さわりの部分を中心に、自分自身の勉強としてまとめていこうかなと思い、この記事を書いていきます。

とは言えさわりの部分だけなのにエライ文字数になってしまっているので、何日かに分けてお読みいただくことをお勧めします。笑

 

先に言ってしまいますと、僕は「海プラが深刻だ=プラスチックを使わなければいい!」という風に片付けられる問題だとは思っていません。そういう意味で、僕はヨーロッパがこの考え方に対して日本より進んでる、ともあまり思っていない派です。

当然、僕も1ダイバーなので、綺麗な海で潜り続けたい、環境は綺麗であり続けてほしい、という想いはあります。同時に僕は、より快適な生活を過ごしたいと思ってしまう1人間です。

この問題は、この両者にとって一番良き形を作り上げるにはどうすればいいんだ?という話で考えなければ、一生解決しない問題だと思っています。

 

そもそもプラスチックって何?

そもそも、プラスチックって何なの?と言う話から始めます。

 

大前提ですが、プラスチックという名称は、特定の物質や成分の名前を表していません。

カテゴリーの名前になります。

 

何のカテゴリーよ?と言うと、
何かしら人為的に、成分を合成して製造された物質全般を指したカテゴリーになります(化学的に言えば、高分子化合物ポリマー、的な)。

その中でも、現在では特に石油を原料として製造されている物質をプラスチックと呼ぶのが主流の様です。

 

ちなみにこのプラスチック”plastic”ですが、語源はギリシャ語の”plastikos”

これは「型を入れて作る」「形作る」と言う意味合いがあるギリシャ語である様なのですが、そのままプラスチックの特性に当てはまります。つまり「色んな形に変形させやすい(=可塑性がある)」という特性です。これは同時に、プラスチックが素材として重用されやすい理由の1つでもあります。

 

特に熱可塑性があるか(=加熱させると変形させやすくなるか)、熱硬化性があるか(=加熱させると逆に変形させにくくなるか)によって
プラスチックは大きく2種類に分けられる様です。以下に簡単な分類表載っけますね。

引用:大塚産業株式会社

 

なーんか色んな種類がおりますが、

  • 日々の生活で登場しやすい製品:熱可塑性プラスチック製
  • あまり気づきにくいけど実は使用されてる製品:熱硬化性プラスチック

というイメージですね。

 

特に「汎用プラスチック」のマークが付いてる

  • ポリエチレン (PE)
  • ポリプロピレン(PP)
  • 塩化ビニル(PVC)

これらが何に使われてるのか?というと、

 プラスチック  使われてる製品
 ポリエチレン お菓子の袋、スーパーのレジ袋、ラップ、ワサビとか辛子のチューブ、農家のビニールハウス、電線、フィルム、灯油とかのポリタンク、バケツ、シャンプーとかの容器、などなど
 ポリプロピレン 自動車や家電の部品、包装用のフィルム、ペットボトルとかのキャップ、コンビニの弁当ケース、プラ食器、などなど
 塩化ビニル 水道管などパイプ全般、サッシ、ホース、靴やカバンの合成皮革、文房具、などなど

※参考:主なプラスチックの特定と用途

・・・といった感じで、「日常で出会うもの、ほぼ全てじゃない?」の勢いで使用されております。

 

プラスチック開発の歴史

こうした素材をどうして作ろうとし始めたんだろうか?というお話。

プラスチックが素材としてある、ということは、それを欲し、開発した歴史がある、ということですよね。

その方面からプラスチックを探ってみようと思います。

 

天然素材よりメリットのある素材探しの歴史

プラスチックに関係しそうな資料など漁っている中で、ふと見つけた文章が個人的に印象に残ってまして、そのまま引用しますと

”Man has worked hard from the earliest times to develop synthetic materials which would offer benefits not found in the natural products around him.”
※引用:History of PVC

サクッと訳すと「人は早い時代から、天然素材よりメリットのある合成素材の開発に力を掛けていた」ということで。

 

天然素材のデメリットって何よ?ということですが、現在のプラスチックのメリットを反対から考えれば

  • 加工しにくい(重かったり変形しにくかったりで)
  • あまり丈夫ではない
  • 燃えたり傷んだりしやすい
  • 価格が高くなりがち(貴重だから)

こんなところかと推測しています。

こうしたデメリットを解決した素材を作りたい、というのがニーズの始まりなんでしょうね。

 

プラスチックの歴史は、1839年にフランスの科学者が「ポリ塩化ビニル(PVC)」を発見したことから語られることが多いのですが、時代的に言えばイギリスの産業革命が落ち着き、その影響が西欧各国に広がり始めてるタイミングです。

近代科学が急速に発展すると同時に人の生活が豊かになり、生活に必要な物資が多くなるにつれて、「天然素材じゃ間に合わんわ!新しい素材が欲しい!」というニーズが増えていったのではないでしょうか。

 

プラスチック年表

プラスチックの歴史をざっと年表に整理します。ざっと見てみてください。

 年号  できごと
 1835 ルノー(フランス)がポリ塩化ビニルを発明。
※実用化までには至らず
 1839 ジモン(ドイツ)がポリスチレンを発明。
 1851 チャールズ・グッドイヤー(アメリカ)が硫黄を使用した天然ゴムの改質法を発見。これが後にエボナイト(ゴム)となる。
 1870 ジョン・ハイアット(アメリカ)がセルロイドを発見。実用プラスチックとして商業化。
※象牙の代替材として、ビリヤードの玉とかに使われる
 1872 バイエル(ドイツ)がフェノール樹脂を発明。
 1889 イーストマン・コダック社が映画フィルムにセルロイドを使用。ただめっちゃ燃えるからあまり使えなかった
 1898 ベヒマン(ドイツ)がポリエチレンを発見。
 1909

ベークランド(アメリカ)がフェノール樹脂を初めて商業化。「ベークライト」として知られ、カメラボディや電話機に使われる様になる。

 1917 不燃セルロイド(酢酸セルローズ)が開発され、映画が燃えなくなる。
 1920 ユリア樹脂が発明される(ドイツ)。
 1926 ヘルマン・スタウディンガー(ドイツ)によって、ポリマー(高分子)が長い鎖状分子から構成されていることが発見される。
 1930 ポリスチレンが工業化
 1934 アクリル樹脂が工業化
 1938 カロザース(アメリカ)がポリアミド(=ナイロン)を発明。
 第2次世界大戦後 PVCやポリエチレン 、ポリスチレン、ベークライトが生活用品で使われ始める
 1960 プラスチック製品の製造が急増

※参考:プラスチックの歴史History of PVC

この年表上で、本格的に工業化されたプラスチック製品が登場するのは1870年のセルロイドの様です。

ビリヤードに使われていた象牙の代替材を募集したところ、アメリカで開発された半合成樹脂であるこのセルロイドが使用されることになった、という経緯です(残念ながら、この時の動機は「象がかわいそうだから」ではなく「象牙が高いから」ってことらしい・・)。

で、1909年にアメリカのベークランドもまた代替素材を探す研究の中で「ベークライト」の開発に成功し、ウハウハに儲かった、といった話も出てきます。とは言えこの時点だと、プラスチック産業自体はまだそこまで広がりがあるという訳ではありません。

 

プラスチックが産業として本格的に拡大するのは第2次世界大戦後

銅やアルミ、鋼といった、戦争の武器や日常生活で使われていた素材が貴重になるにつれて、「プラスチックって実は使えるんじゃね?」と、戦争中のタイミングからスポットライトが当たるようになっていきます。

そこから戦争の激化とともに、プラスチックを戦争で使用する武器や機械、さらにそれを製造する機械へ使用するなど、その技術を急速に進化させていくことになりました。

パソコンとか携帯とかもそうですが、技術の発展ってやっぱり戦争を外して語ることは出来なさそうですよね・・

 

で、戦争が終わり、ぽっかり空いてしまった日用品のマーケットを見た時に、関連する技術者が「このプラスチック技術、転用できるんじゃね?」という形になり、

そこからPVC、ポリエチレン、ポリスチレン、ベークライトで造られた生活用品が次々に登場していくことになり、技術と共に汎用性がますます進化していき、生産量の激増に繋がっていきます。

 

この傾向はグラフでもよく現れていまして、

引用:World Economic Forum

1950年初期には200万トンという生産量が、2015年には3億8,100万トンと、半世紀で190倍もの凄まじい量へと激増しております。えげつない伸び率・・・

 

日本のプラスチック生産の内訳

ちなみにですが日本の生産量の変遷はこんな感じ。

引用:塩ビ工業・環境協会

2017年時点で1,107万トンの製造量。特にバブルまでの期間で製造量が激増してるのが分かりますね。一方でリーマンショック辺りで一時的に減ってます。

シェアが大きいのはやはりポリエチレン・ポリプロピレン・塩化ビニルの「汎用プラスチック」3種類の様。

 

現状のプラスチックの消費量・廃棄量

プラスチックの歴史と、製造量が増えていった経緯が大体わかったところで、

  • 今どのくらい使用されてて
  • どのくらい捨てられて
  • どのくらい海に流れてしまっているのか

といったところを見ていきます。

 

まずはこの図から。

引用:Sience Advances

こんなサイクル図がありますが、1950年から2015年に製造されたプラスチック製品の行方について書かれています。

 

大体ここで推定されている限りですが、

  • この65年間の間に製造されてきたプラスチックの総量:83億トン

となっていて、このうち、

  • 廃棄されずに使用されている量:25億トン
  • 直接焼却処理されている量:7億トン
  • 直接廃棄されている量:46億トン
  • リサイクルに回されてる量:6億トン
  • リサイクルで回った後に結局焼却される量:1億トン
  • リサイクルで回った後に結局廃棄される量:3億トン

となっております。

 

つまり、

  • これまで製造されてきた総量の約30%が今も使用されている。
  • リサイクルに回しはするが、結局製造された量の約67%にあたる57億トンが廃棄処理されている

という概算になります。

 

海にはどのくらい流れてしまっているの?

それではこの廃棄処理されたプラスチックのうち、どのくらいの量が海に流れてしまっているのか、についてです。

 

マッキンゼーとOcean Conservancyによる合同調査のレポートによれば、2015年時点で海に流出しているプラスチックの総量は1億5,000万トン、と推定されています。

で、それ以降も毎年800万トンのプラスチックが流出しているという推定が出ています。

引用:WWF「海洋プラスチック問題について」

この図が表してる通り、毎年ジャンボジェット機50,000機分の海洋プラごみが出ている試算。

単純計算すれば、2019年までに1億8,200万トン流出してしまっていることになりますね。

 

さらに重要な点で言えば、国別で見るとアジアでの流出量が多い点が挙げられていて、

  • 中国
  • インドネシア
  • フィリピン
  • タイ
  • ベトナム

この5カ国だけで世界の半分以上のプラスチック流出量を占めている、という特徴もあります。

引用:WWF「海洋プラスチック問題について」

ダボス会議では、このまま行くと2050年には海へのプラスチック流出量は今の4倍以上になり、「海洋プラスチックごみの量が海にいる魚を上回る」という、割とショッキングな予測も発表されています。
※あくまで「魚の総量が変わらない」前提はありますが

 

このショッキングな予測が実現されないように、どうすべきか考えましょう、というのが海プラ問題の基本的な考え方ですね。

 

海プラ問題、その解決策として考えられるのは?

ここからは個人的な考察に入ります。

ざっくり考えれば、「プラごみが海に流れない様にする。少なくとも減らす」ということがそもそも大きい枠で考えた時の解決策ですよね。

 

では、それを実現しようと思った時に、どんな策が考えられるのか?

先ほどのサイクル図を元に考えてみると、大体こんな感じで分布されるんじゃないかと思ってます。

  1. 処理されたプラごみが海に流れないようにする
    • ゴミ処分場からの流出を防ぐ
    • 川や海岸からの流出を防ぐ
    • 街中から流れていくのを防ぐ
  2. プラごみ自体を減らす
    • リサイクルにより多く回すようにする

  3. プラスチックの生産量自体を減らす
    • つまり、供給を減らすために需要を減らす(=プラを使わない)
    • 代替素材を生産する

これらそれぞれの実現可能性について、検証してみます。

繰り返しますが、あくまで個人的な考察です。いずれは、違う意見を持ってる方と議論してみたいです。

 

処理されたプラごみが海に流れないようにする

まずは、プラごみが今と変わらず(或いは今よりもっと)出続けることを前提として、その出たプラごみが海に流れないようにする、という策。

ごみとなったプラスチック製品が流出させないようにするには、いくつかパターンがあるものと思っています。

 

ごみ処分場からの流出を防ぐ

処理されたごみの最終地点がごみ処分場(=最終処分場)なのは、何となく昔の社会で勉強した話ですよね。

ごみは焼却されたり、細切れにされたりして、色々と処理されたものがごみ処分場に行くことになりますが、これが風や雨にさらされて、最終的に海に流れてしまう、というパターンがあり得ます。

ので、一度処理されたごみが処理場から動かないように整備していくことが大事になります。この辺りは国・自治体・専門の業者に対する努力を求めなければいけない面になりますね。

 

・・もっとも、日本ではこの流出パターンはあまり考えにくいものです。日本のごみ処分場はごみの種類によって処理場の形式を変え、雨水によって流れるのを防止する技術や埋立の技術等が長年掛けて培われており、エコに関する意識が強くなるにつれてこの進歩はますます進んでいってます。

 

ただ、環境省の発表によれば、日本のごみ処分場はあと20年でキャパオーバーになる、という推測が出されています。

いつまでもごみを国内で処理続けられる状況ではない、という状態ではあります。。

 

川や海岸からの流出を減らす

Ocean Conservancyのレポートによれば、世界中のプラごみの9割近くが、10の川から流れて来ているのが大半です。

そのうち中国の長江だけで55%は占めてる・・・というから驚きのデータです。

 

量としては世界的に問題にはならないものの、海岸や川に放置されているごみというのは、日本でも問題になってる話ですよね。

引用:あらかわ クリーンエイド フォーラム

放置されたごみがそのまま水に流され、そのまま海に流れてしまう・・・この様な「知らないうちに流れてしまってる」ごみに関しては少しでも減らしていきたいですよね。

 

既にこうしたごみの流出を防ごうと、自主的にごみを拾っていく活動は行われています。例えばこの団体。

参加されたことのあるダイバーさんも多いのでは無いでしょうか?海岸に捨てられてしまったごみを皆で拾っていこう!という活動を行っています。2019年は全国でなんと12,000人超えの人が活動に参加しています。

地味に前やったことあったりして

 

他にも、ダイビング中に気付いたごみは拾ってこう!ということで水中写真家のむらいさちさんが監修されたオーシャンバッグの販売などといった活動が知られていますよね。

チリツモではありますが、結局こうした活動が少しずつ全国に広まってくことが大切なキーの1つなんだろうな、と思います。

 

ただ、もっと考えなければならないのは、そもそも川や海にごみが放置されないようにするにはどうすればいいか。

本当であればこうしたごみ拾い活動をしなくても良い環境を作らなければ根本的な解決にはならない訳ですしね。

 

残念な話ですが、既にごみを放置している人達に「ごみは放置はしてはいけないもの」と意識を変えさせていくのは、やらなきゃいけないことではあるものの、相当長い道のりにならざるを得ないものと考えています。

赤で全然OKって思ってる人達に「青でないといけない」と思わせるのは大変です。それにごみに関しては、捨ててしまった時点で存在を忘れて「自分とは関係ない何か」と思ってしまっている可能性もあります。なので、放置ごみによる窮状を訴えても響かない可能性すらあるという・・・法律・条例として罰則を設けない限りは厳しい話だと考えてます。

 

1つアリなのでは?と思うのは、設置・運用するごみ箱を増やすこと。

 

放置する人の心理は色々ありそうですが、1つあるかなと思ったのが「どこに捨てればいいか分からない」という心理。「いやそこは持って帰れよ」と言いたくもなるところですが、正直言って用済みのごみを持って帰ること自体がめんどいことは確かですよね。その掛け合わさった心理に従った結果、放置に繋がる、と言った流れは十分考えられます。

であれば、大きめのごみステーションを作って、その場で出たごみの捨てる場所をハッキリさせる。公園にあるような大きめのごみ箱を入口付近に設置しておくようなイメージです。

自治体に負担を上乗せてしまう方法なのは確かなのですが、海や川が重要な観光資源であり、多種多様な人が年中(特に春〜秋)来ることを考えると、そのくらいの対策をしても良いのではないでしょうか。

 

街中から流れていくのを防ぐ

イメージしやすいもので言えば・・・

渋谷のハロウィンの激混みコスプレパレードから一夜明けて、大量に渋谷の街中に残されたごみ。

Shibuya Halloween 2016 (October 30)
Shibuya Halloween 2016 (October 30) / Dick Thomas Johnson

これが雨風に晒されて宇田川とかにガーーーーっと流されてしまう様なケースです。

 

一部の調査では、海洋ごみの8割ほどは陸から来ているとされています。

ルートとして考えられるのは前述の通り、街中に捨てられたごみが川を伝って海に流れていくパターンです。

 

川や海岸に放置されたごみにしてもそうですが、ごみとして自治体に処理されたものと違い、うやむやの状況のうちに発生したごみが、誰も知らないうちに海に流されていく・・・この状況は確かに解消したいですよね。

こうした街中での放置ごみを自主的に拾う活動する団体の方々もたくさんいらっしゃるのは確かですが、放置ごみそのものが出ない形に出来た方が遥かに良いですよね・・これも川や海岸と同様。

とは言え、放置していく人達の意識を変えていくのは大変長い道のりです。それこそ渋谷みたいな街なんて、罰金発生しない限り無理だろうよ・・・

 

・・・ただ、渋谷の街中をちょこちょこ歩いてて思うことあります。ごみ箱、すっくない。

 

これだと気が緩んだらそこら中に捨ててしまうだろう、って思うくらいにごみ箱少ないな、と感じます。さっきから同じこと繰り返して言ってるような気がしますが、駅以外の街中でごみ箱の設置や運用が進んでいくだけで、「知らないうちに流されるごみ」は随分減っていくのではないか、と個人的に考えています。

 

そもそも、海洋ごみが増える理由がもし本当に「うやむやのうちに発生したごみが、知らないうちに流されてるから」なのだとしたら、「ごみはごみ箱に捨てる」という一見非常に当たり前なことが当たり前としてまかり通るのが、実は1番の解決法なのではないか、って考えたりします。

もちろん一概には言えませんが、この意識を徹底していくこと、また実際にその通りに運用できる状態にすることが重要だと思いました。

 

プラごみ自体を減らす

続けて、プラスチック製品自体は減らさないけど、そこから発生するプラごみ自体を減らす策。

要するにリサイクルです。

引用:プラスチックリサイクルの基礎知識

これは日本における2017年時点までのプラスチックごみの量と、そのリサイクル率を表した表です。

2017年の数値を見ると、総排出量から換算したリサイクル率は86%高い数値が出ているように見えます。

 

が、この数値に関しては議論がかなり分かれるところです。

理由は合計量の半分以上を占める「サーマルリサイクル」

これはプラスチックごみを燃やして発電に活かしたり燃料にしたりするものを意味しています。つまり、結局は燃えカスが残っちゃうんですよね。意義がある活用の仕方ではあるのですが、これを「リサイクル」と言い切ってしまって良いのかどうかは国によって定義が異なってきます。

 

ここでは「プラごみ自体を減らすリサイクル」自体に焦点を当てたいので、一番その類に該当する「マテリアルリサイクル」をチェックしていきます。2017年で言えば211万トンがその数値にあたりますね。

「マテリアルリサイクル」はマテリアル(物)からマテリアルへリサイクルをする、という意味合いで使用されている用語なので、一見211万トン全てがそのまま商品として再利用されている様に見えますが、実態はちょっと違います。

経産省の資料を見ると、この211万トンのうち、商品として再利用されているのは76万トン1/3程度です。あとはほとんど海外への輸出。

言ってしまうと、すべてのプラスチックごみのうち、完全に物としてリサイクル出来ている率は8%程度なんです。

 

これはつまり、プラスチックをそのまま物としてリサイクルすることの難しさを表しています。

世界でプラスチックのリサイクル率が低い5つの理由&日本の現状

こちらのブログ記事でまとめられていますが、プラスチックごみを解体して、元の純度のまま再利用するには、元の製品の複雑性、汚れ、素材の劣化など、様々な理由で現状難しいという実情があります。

 

つまりこうしたマテリアルリサイクルをより広げたいのであれば、製造過程も含めたリサイクルの工程や技術をどれだけ効率化・発展させられるかに掛かってきます。これは割と先の長い話で考えなければなりません。取り組むべき事項では間違いなくありますが、すぐ達成できるゴールとは思うべきでは無さそうですね。

 

プラスチックの生産量自体を減らす

最後に来たこの項目。ヨーロッパなどではこの考え方が中心になってきている感がありますが・・・

 

つまり、供給を減らすために需要を減らす(=プラを使わない)

NHKのこの記事を見て僕は結構ビックリしてしまいました。

本気ですか?環境対策 ダボス会議で見た世界の現実

この記事では2020年のダボス会議で「プラスチックの削減」をテーマにしたセッションの際に、サントリーの新浪社長の提言に対する周りの辛辣さに関して書かれていました。

 

新浪さんは使用済みペットボトルから「再生ペットボトル」を作る技術が発展出来れば、プラスチックごみの削減はもちろん、CO2の削減にも貢献できる、という持論を展開されてました。

が、結局「ペットボトルを使う」ことそのものを批判されてしまっておりました。インドネシアの環境NGOの少女のコメントに対し会場が大拍手、という流れが起きてて、サントリーの社長さん、針のむしろ状態です。

 

まぁ確かにダボス会議のあの場で「より現実的な策」とか「自分の技術の凄さ」をアピールするのはちょっとお門違いだった感も否めないですが、

つまりプラスチックをより使わないことこそが正だ、という流れが世界レベルで起きてることはよく分かりました。

 

で、正直思ってしまったのは

「出来んのそんなこと?俺は無理だよ」

という本音です。

 

冷静に今この記事を打ちながら周りを見回すと・・・ペットボトルに入ったサントリーの「いろはす」飲んでるし、プラで出来たゴミ袋にティッシュとか捨ててます。キッチンの洗剤の入ったボトルもプラだし、ハンドソープの容器もペットボトル製。シャーペンやクリアファイルはがっつりプラだし、スマホにもプラスチック用品が多々含まれています。パソコンのアダプタとかマウスもプラスチック製だし。コンタクトレンズもそれいれるケースも皆、プラスチック製です。

要は、日常生活のそこら中プラスチック製品です。これ今すぐ使うのやめろと言われても、正直困ります。便利だし。

 

ダイビングの器材にしたってそうです。

マスクのフレームはプラスチック素材がよく使用されています。シュノーケルもプラスチックパイプ。フィンはラバータイプが多いですが、プラスチックタイプのフィンもありますよね(というかラバーも合成樹脂なので原理的には似てます)。BCにしてもパックルなどプラスチック用品が使われている箇所は多々あります。レギュレータにしても所々プラスチックは使用されてる訳だし・・・

これらの器材、「今すぐプラを使ってない器材に替えろ」って言われても、非常に難儀です。

 

序盤で書いた通り、プラスチックというのは、人間がより便利な生活を求めて半世紀掛けて開発された発明品です。

より便利な生活を求めて天然素材に替わる新しい素材を求めた結果、丈夫で、軽くて、安くて、何にも応用しやすい素材が開発されていったのです。それがプラスチックです。そしてプラスチックは確実に、人間の生活を便利にするのに貢献しました。でなければ、ここまで生産量が増えるはずがありません。

 

今すぐこれを使うのを止めろ、というのは、ほぼほぼ生活レベルを落とせ、というのに値するし、それ相応の覚悟を持って断プラスチックに走らないといけません。

出来ますか?少なくとも僕は、より便利な生活をしたい俗人間なので、無理です。

なので個人的には、この策はあまり現実味を帯びたものではない、と感じています。

 

代替素材を生産する

とは言え、これまでの歴史では見えていなかったプラスチックの負の面が見えてる以上、今の状態をそのままにしておくのも良くないのは事実です。

僕だって俗人間ですが、海は綺麗のままでいて欲しいと思っています。何か矛盾して聞こえるかも知れませんが。

 

海は綺麗のままでいて欲しい。でも生活レベルは落としたくない。

そう考えたら、プラスチックと同じくらい便利で、かつ海を汚さない代替素材を開発する、というのも1つの道筋になってきます。

 

例えば生分解性プラスチックと言って、一定の条件下で自然の微生物によって分解されて水と二酸化炭素になるプラスチック、といった素材の研究がすでに開始されています。

これで海環境で分解可能なプラスチックが出来て、それをポイ捨てされがちなプラスチック製品に応用出来たら、確かに海プラの問題解決につながるかも知れません。

 

こうした研究や検討は既に始められてはいて、経産省の下で今年度事業予算も付けられていますこちらの資料のP6, 7を参照)。

当然新しい素材の開発なので、これも結構長期な目線が必要です。つまり莫大のお金と時間の掛かる話になってきます。

大事なのは、それを掛けるだけのニーズがある、ということを当事者達にしっかりと分かってもらうことだと思います。

 

まとめると・・・

色んなパターンの解決策を検証してみましたが、

結局は短期的な目線長期的な目線で見るべき解決策があるように思います。

 

短期的な目線
  • 「ごみはごみ箱に捨てる」という意識の徹底
  • 設置・運用するごみ箱の数を海・川・街中で増やす
  • 定期的なポイ捨てごみの回収
長期的な目線
  • マテリアルリサイクルの工程・技術の進化(製造工程も含む)
  • プラスチックの代替素材の開発・大量生産化

短期的な目線は、要は「知られざるごみ」を無くすための努力をしていくこと。ゴミがゴミとして自治体に処理・運用されれば、そもそも海に流れていくリスクは現時点で低いはずなんです。だからごみはしっかりごみ箱に捨てる。これを徹底する。ただごみを持ち帰るまで意識できず捨ててしまう状況はどうしても残るだろうから、それに備えてごみ箱の設置・運用を増やしていく。この辺りは自治体の意識次第となってきます。

 

とは言えごみ処理場にもキャパはある。いつまでもごみの量自体が増え続ければいずれキャパオーバーになって処理しきれなくなる可能性はある。

それに備えて、「ごみそのものを減らす」ための長期的な目線が必要になってきます。マテリアルリサイクルをより回せるための技術開発、新しい素材の開発。そこに向けた自治体・企業の努力が必要になってきます。

 

大事なのは、それに取り組むだけの価値(=需要)があるというのを当事者となる自治体・企業に感じてもらえるかどうか、という点です。何せ長期目線なのでコストやリソースが多大に掛かる事業になるので、最終的にそれが元を取れない!というと営利的には本末転倒になってしまいます。

ESG投資とか言われ始めてる時代なので、そもそもこういった課題に取り組めてるかどうかで企業価値そのものが決められそうな時代にはなってきそうとは言え、こうした意識付けもまた大事になってきます。

 

海洋プラごみ問題は、なぜ世界会議の中心議題になれたのか。

最後に、僕が非常に気になってたことについてです。

「そもそも、海洋プラごみ問題は、なんで世界会議の中心議題になれたの?」という点。

 

世界中のリーダー陣営が集まるダボス会議・G7・G20では、話さなければならない政治・経済のテーマが実にたくさんあります。開発途上国の貧困問題にしても、ジェンダー問題にしても、地球温暖化問題にしても、大きな問題って常にたくさん存在してるんです。

そんな中でも、冒頭で書いた通り、2019年にそれらの会議の中心議題となったのは海洋プラごみ問題でした。

なぜ沢山ある大きな問題の中から、このテーマが急激的に取り上げられ、中心議題になりえたのか、すごい気になってました。

 

で、個人的に、とある知り合いにこの質問をぶつけてみました。

この方、日本で「ゴミをゼロにする社会を目指す」という信念で活動しているNPO法人を運営しており、ダボス会議にも招待された結構すごい人なのですが。

その方からいただいた回答がすごい興味深かったです。

知り合い
いろいろありますが、オンラインメディアを通じた市民社会の意識の成熟(=企業にもこれがニーズだと思わせしめるだけのattention buildingができた)+ それをバックアップする調査&レポート、とかのコラボですね。

なるほど。

オンラインメディアは、通常のネットニュース等もそうですが、やはりSNS

プラスチックごみが体内に詰まっていた海鳥、ストローが刺さったウミガメ、打ち上げられたクジラの体内から大量のプラスチック・・・こうした衝撃的な画像がSNS上で拡散されたからこそ、世界中の一般的な市民の目線がこの問題に一気に向けられました

そしてほぼほぼ同じタイミングで、今回僕も引用した海洋プラごみに関する現状と今後の推測を表した科学的なレポートが発表されました。この感情と論理がセットになることで、「あ、これは取り組まないといけない問題っぽい」と政治・経済に感じさせた、と考えると、納得がいきました。

 

先程も書きましたが、海洋プラごみ問題を解決していくにあたり、関係してくる自治体や企業に取り組むだけのニーズ・価値がどれほどあるかを認識してもらうことは重要です。

それをどう醸成するのか。この世界会議までの流れは、そういう意味で参考になるかも知れません。ソーシャルの時代に伝えられることは沢山ありますしね。

 

例えばBLUE SANTAのプロジェクトもSNSではよくアップされていますが、「皆でゴミ拾いやりました!達成感ありました!」的な写真ではなく、実際に拾ったゴミの中身を伝える方向にシフトするだけでも現状を伝える際の説得力増しますよね。

色々やり方はあると思いますが、こうした発信による意識醸成を、数値的根拠も調べながらやっていく、というのが結局は大事なんでしょうね。

 

まとめ

はい、という訳で、ブログで書くにしては異常に多い文字数の記事となってしまいました。

なってしまいましたが、書けた海洋プラごみ問題の序の口しか書けてないような気がしてます。

 

解決策はあくまで日本をベースにして書いてありますが、実際世界をベースに見ないといけない問題ではありますしね。

押さえとくべき点はまだまだ沢山ありそうです・・・

 

「海洋プラごみ問題って、そもそも何が問題なの?」という方向けに、参考になれば幸いです。

そして「この解決策の方が絶対良いでしょ!」というのがある方は、ぜひ議論させていただけると嬉しいです。

 

ではでは!今度は短めのブログを書こう・・・笑

 

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2件のコメント

プラ問題、仰る通りにいきなり生活から全てを無くすのは難しいというか無理ですが、竹製ストローに変えるとかマイボトルやマイバッグを持ち歩くとか少しずつ変えていけばだいぶ使われるプラの量は減るのではと思っています
企業が代替材を開発してみつけてくれるのは、結局消費者からのニーズの高まりだと思うので、ダイバー間でプラへの意識が変わっていって、それが大きなウェーブになって世界を変えていけたら素敵ですね

コメントありがとうございます!

あくまで個人的な意見としてお聞きください。
竹製ストローに変えたりマイボトルに変えると言う行動が、各消費者のニーズに合った行動なのであれば
(例:竹製ストローの方が扱いやすいし持ちやすい、マイボトルの方が熱々のスープを飲める、など)、そこは合理的な流れだと考えます。

ですがそこに「プラを無くしたい」「環境を守りたい」と言う、いわゆるSDGsに関連した意識を持ち、それをニーズという大きな波に変えたいのであれば、そこはかなり気を付けた議論を行うべきだと考えております。SDGsにおいては「プラを無くして環境を守りたい」のであれば、「そのプラを製造していた人達の暮らしも守るにはどうすべきか」と言う議論も含めてワンセットなはずです。プラへの意識が変わっていくのは確かに今後の理想かもしれませんが、意識が変わった結果「プラ=悪」と捉えてしまうのは少し違うと考えております。

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