保存して使おう!ダイビングの持ち物リスト

エンリッチド・エア(ナイトロックス)SP取得しました!ちょっと紹介します

こんにちは!ダイバーラウンジです。

 

以前、8月に行った串本ダイビングに関する記事を書きました!

この時は初めて行った和歌山の、それも本州最南部の海を堪能するというのが第一の目的だったのですが、もう1つ目的がございまして。

はい、それがこちら、エンリッチド・エア(ナイトロックス)ダイバーSPの取得です。

串本に行く計画を立ててた際に現地のガイドさんから「せっかくなら取リませんか?エンリッチ無料で使えますよ」と打診をいただき、確かに遠出して行くわけだしせっかくなら取っちゃおう、となりました。

 

これまでAOWとなって以降、格別どのSPも取得していなかった僕なのですが、直接、又はClubhouseなどでガイドさんと話してた中で「少なくともエンリッチとディープはあった方が良い」というアドバイスをいただいておりました。その内の1つを無事取得したと言うわけでございます。

ちなみにディープより先に、なぜかアルティチュード・ダイバーのSPを先取ってしまいました。本栖湖で。流れっす。

 

ここでは講習の内容の過度なネタバレにならない程度に、エンリッチド・エア・ダイバーSPがそもそも何なのか、どんなことが出来るようになるのか、講習ではどんなことをやったのかをメモがてら書いておこうと思います!

そもそもSPって?

エンリッチド・エア・ダイバーSP・・・の「SP」って何よって話から行きます。

 

SPは正式に言えばスペシャルティ・コース。大抵PADIで言うAOWD(アドバンス・オープン・ウォーター・ダイバー)コースの後から受講できるコースです。

PADIが用意しているスペシャルティ・コースの一部

ざっくり言ってしまえば、スペシャルティ・コースはダイビングにおける特定のテーマに沿って行う講座のようなもので、ダイバーさんがよく「○○のSP取った!」と言ってるのがそれにあたります。

ボートディープドライスーツなどパッと思い浮かびそうなコースもあれば、流氷ダイビング向けのアイス高所ダイビング向けのアルティチュード水中写真を極める水中フォトグラファーなど、実に様々なコースが用意されています。特にPADIはコースの数が27と、数ある指導団体の中でも最多です。

エンリッチド・エアー・ダイバーSPもそのうちの1つの講座となります。

 

エンリッチド・エア・ダイバーSPとは?

この黄色と緑のラベルが目印のエンリッチ。引用元はこちら

エンリッチド・エア・ダイバーSPとは、ざっくり言ってしまえば

「いつもより酸素の割合が高い空気でダイビングしようぜ!」

という講座です。

 

通常のダイビングとは違う空気タンクを使用してのダイビングになるので、その際何に気を付けたらいいの?どんな行動を取ればいいの?というのを学ぶコースになります。

コースは主に以下の3部構成。

  • 知識開発(学科講習)
    ダイビングに必要な知識を教材を通して身に付ける。学科試験もあります
  • 実習①
    酸素アナライザーを使った酸素割合の測定の実習
  • 実習②
    エンリッチド・エアを使ってのダイビング x 2本

テキストを多少事前に読んでおく必要はあるものの、僕は串本にいる2日間で取得させてもらいました。多分、内容的には1日で終わることも可能です。

こちらがこのコースで読み込むテキスト。

ページ数は40ほどなので、OWDやAOWDみたいに分厚くて読み込むの大変!ということはありません。

テストの問題用紙

テストはバージョンAとBがあって好きな方を選べ、全部で25問出題されます。

画像の引用元はこちら

実習①の「酸素アナライザーを使った酸素割合の測定の実習」って何するのよ?という感じですが、こういう酸素アナライザーをタンクのバルブの空気出る口に押し当て、そのタンク内の酸素がどのくらいの割合かを測るっていう動作になります。

通常の空気タンクが(後述しますが)21%なのを確認した上でじゃあこのタンクは何%?というのをチェックする、という流れですね。難しい作業ではありません。

そしてエンリッチド・エアを使ったダイビングを2本こなして、晴れてSP取得!という感じになります。

 

エンリッチド・エアって何?ナイトロックスとの違いは?

講習の内容はざっくり前述の通りですが、ではそもそもの話、エンリッチド・エアって何?ということについてです。

そのまま英語で書くとEnriched Air、訳したら「高められた空気」ってなりますね。

引用元はこちら

まずはおさらいになりますが、通常の空気には窒素が78%、酸素が21%、あとは二酸化炭素だのアルゴンだのが含まれています。

通常の空気タンクと、黄金崎

普段のダイビングで使われる空気タンクには、この通常の割合の空気が圧縮されて入れられています。

よくダイビングをやってない方々とかに「ボンベ」とか「酸素ボンベ」と言われがちなダイビングの空気タンクですが、中に入ってるのは100%酸素ではなく、通常の空気なんですよね。この点は決定的に違うので、あんまりダイバーが「ボンベ」と言ってるのは聞いたことがありません。

通常の空気とエンリッチド・エアの違い。引用元はこちら

で、話を戻すと、Enriched Air、「高められた空気」は何を高められたかと言えば、この酸素の割合です。

21%が通常の空気における酸素の割合ならば、そこから更に26%、32%と割合を高めたものが「エンリッチド・エア」と呼ばれる空気です。

真ん中の空気タンクが通常の空気。右端にあるのがエンリッチド・エアを使ったタンクです

ちなみにエンリッチド・エアなのですが、「ナイトロックス」と呼んでる方もいらっしゃいますよね。

「エンリッチド・エア」と「ナイトロックス」、呼び方が違うけど何か違いがあるのか?というと、ぶっちゃけ違いはそこまでありません。どちらで呼んでいるにせよ、同じ空気のことを指しています。

少し言及すると・・・

ナイトロックス(Nitrox)という言葉は窒素(Nitrogen)と酸素(Oxygen)を合わせて作った造語のようなもので、基本的に「窒素と酸素の混合気体」を意味する言葉です。

なので、広義的に言ってしまえば酸素割合21%の通常の空気もこのナイトロックスの定義に当てはまる、ということになりますが、大体「ナイトロックス」ってダイバーが言う時はこの通常の空気は含まれず、酸素の割合を高めた空気のことを指して言ってます。割と世界中でそうみたいです。

更に言及すると・・・

このダイビングで使用する空気は正式に言えば「エンリッチド・エア・ナイトロックス」と言い、英語にしたら「Enriched Air Nitrox」となります。もはや呼び方分かれるどころか合体している。

つまり「酸素濃度を高めた窒素と酸素の混合気体」ってことですね。これを使ってタンクには基本的に上記のように「Enriched Air Nitrox」と書かれた黄色のラベルが貼られており、通常の空気を使ったタンクと区別されます。

黄色が酸素、緑が窒素の割合。引用元はこちら

「酸素の割合どんくらい高くなるの?」ってことについてですが、多いのは32%のようで、同じくらい多いのが36%。

この際、「Enriched Air Nitrox」が略されて「EAN」となり、その後に使用されている酸素の割合が明記されます。32%の場合は「EANx32」、36%の場合は「EANx36」です。

僕が串本で先日使用したのは「EANx32」の空気でした!

 

エンリッチド・エア・ナイトロックスを使うメリットは?

さてこの「通常空気より酸素濃度の高い」エンリッチド・エアですが、これを使ったダイビングは通常の空気を使用したダイビングと比べて何か良いことがあるのでしょうか?

それで言うと当然良いことがあるからこそSPが設けられている訳ですが(笑)、そのメリットについて見ていきましょう。色々とあるのですが、最も取り上げられるものとして

減圧症のリスクが(通常の空気と比べて)減る

ということで、それに付随するメリットがいくつか出てきます。

減圧症の軽いおさらい

いつかどこかで減圧症に関してはしっかり調べて記事を書いてみたいのですが、ここでは軽めに減圧症のおさらいをします。

潜水中に吸った高圧のガス中に含まれる生理的不活性ガス(空気潜水では窒素、以下窒素)は、周囲の圧力に応じて体内に溶け込みます。溶け込んだ窒素は、浮上(減圧)とともに呼吸によって排出されます。

しかし、呼吸による排出が追いつかない場合には、窒素は組織内や血管内で気泡化します。気泡は、物理的に血管を詰まらせ、組織を圧迫することで障害を起こします。また、気泡は血管内皮細胞を障害したり、血液が固まりやすくなったりする等の二次的な障害も引き起こし、減圧症が発症するとされます。

引用:Marine Diving Web

ざっくり言ってしまえば呼吸で吸収した窒素が身体から抜け切らずに体内で気泡になって悪さをする、というのが減圧症の仕組みとなります。

その発症のリスクを抑えるために、OWDでは潜水時間や水深、休憩時間などの計画だったり、安全停止のやり方を学んだりしますよね。

 

減圧症のリスクは呼吸する空気に含まれる窒素の量と大きい結び付きがあるわけですが、エンリッチド・エアだと通常の空気と比べて含まれている窒素の割合が低いです。つまり、同じ量の空気を吸ったとして、吸収する(上で体に残る)窒素の量が減ることになり、それだけ減圧症のリスクが減ることにつながります。

もっと言えば、潜るポイントの水深が同じという前提で考えると、潜っていられる時間(減圧不要限界)が長くなることを意味しています。

例えば通常の空気を使って水深18mのダイビングをする場合、通常の空気を使った減圧不要限界が約60分である一方で、EANx32を使った場合は約100分になります。40分も違う!

 

長く潜るダイビングに向いている

通常の空気と比べて減圧不要限界が長くなる、ということは単純に長く潜りたいダイビングにエンリッチド・エアは向いています。

1個、地元葉山でのダイビングで例を出します。

葉山でお世話になってるダイビングショップNANAさんでは数年前にエンリッチド・エアが導入されたのですが、見ている限り多くのベテランダイバーさんが通常の空気からそっちに移行して使用されている印象があります。

葉山というダイビングポイントですが、どちらかと言えば小さな生き物が多いこともあって、マクロでゆっくりカメラ撮影をするダイビングが全体的に推奨されています。そのため集まってくるダイバーさんもゴリゴリの一眼にゴリゴリのストロボを装備したカメラ派ダイバーさんが多いです。

そして、やはり生き物1匹1匹に相当な時間を掛けて写真撮影をされています。中には珍しいのが出たと思ったら40分くらい使っちゃったというダイバーさんもいらっしゃるほど。

ただ、葉山ってポイントによって水深が22〜25mあり、油断してずっと海底付近にいるとDECO出してしまうリスクもまぁまぁあったりするんです。DECOを気にしながらカメラ撮影・・・ってのも、なかなか気が休まりませんよね。

アライソコケギンポ
葉山で見れる真っ黄色のアライソコケギンポ

そこでエンリッチド・エアを使えば、潜れる時間も長くなるしDECOで焦るリスクも減ってくる。より安心してダイビング(&カメラ撮影)に臨めるということで、ダイバーさんにとってもバンザイバンザイ、となるわけです(一応言うと「より安心して臨める」ってだけで、「油断してOK」という意味では無い点は注意です)。

色んなダイビングスタイルがあると思いますが、こうした例のようにより長く潜ってたいダイビングの場合にエンリッチド・エアのメリットが出てきます。

 

ダイビング間の休憩時間が短くて済む

含まれる窒素の量が減る分減圧症のリスクが減る、という話は書いた通りですが、これはつまり窒素を抜くためのダイビング間の休憩時間(いわゆる水面休息時間)も通常の空気より短くて済む、ということになります。なので、1日に3回とか4回修行ダイビングをやるぞ!て時は結構オススメかもしれませんね。

もっとも、複数人いて、ある人はエンリッチド・エア、ある人は通常の空気を使用している場合は、通常の空気を使ってる人に合わせての休憩時間になります。これはこれで、エンリッチド・エアを使ってるダイバーの方がより窒素が抜けてる状態になってますし、それだけ減圧症のリスクも減っています。

ただまぁ無茶をして良いって意味じゃないからその辺拡大解釈しないように、ですね!!

 

エンリッチド・エアで気を付けなければいけないこと

前述の通り、酸素の割合を高めたエンリッチド・エア・ナイトロックスの使用は通常の空気と比べてメリットのあるダイビングになりますが、一方でデメリット、と言うより気を付けなければならないこともあります。

酸素中毒に気を付けろ

エンリッチド・エアによって窒素の割合が低くなることで減圧症のリスクが減ることは前述の通りなのですが、酸素の割合が高くなることで上がるリスクがあります。それが酸素中毒です。

酸素中毒(さんそちゅうどく)とは、超高分圧の酸素を摂取した場合、またはある程度高分圧の酸素を長期にわたって摂取し続けることによって、身体に様々な異常を発し、最悪の場合は死亡に至る症状である。特にスクーバダイビングなど、空気あるいは混合ガスを用いての潜水時に起こりやすい。

wikipediaより引用

ここで言う「分圧」とは、大気中に含まれてる特定の気体の圧力のことを指します。酸素の場合は酸素が掛ける圧力なので「酸素分圧」と言いますが、これが高すぎることで起こる障害のことを酸素中毒と言い、エンリッチド・エアの場合は通常の空気と比べてこれになりやすくなる、と言う特徴があります。

 

ディープ・ダイビングには向かない

じゃあどういう時に酸素分圧が高くなってしまうの?と言うと、これは水深と関係してきます。

引用元はこちら

深いところに潜れば潜るほど大気中の気圧が高くなる・・・というのはOWDの学科でやった通りですよね。それに伴って酸素分圧も一緒に上がっていきます。

なので、酸素分圧が危険水域まで行かないよう、行ける水深が設定されています。

具体的な計算方法はテキストを見てみよう!って感じなのですが、少なくとも水深40mを超えるダイビングはエンリッチド・エアを使うダイビングにおいてまず推奨されません。35m付近も怪しいところです。

なので「窒素が少ない分水深が深いダイビングもリスク減るんじゃない!?」なのかと言うと、減圧症的な意味ではそうかもしれませんが、結局酸素中毒の危険性が高まってしまうため無理、となります。

一応これらはテキストを読み込めば理解できる範囲ではあるのですが、エンリッチド・エアを使う上で決して油断しちゃいけない面になります。

 

結局減圧症のリスクが消えている訳ではない

油断しちゃいけないっていう意味で言えば、メリットで書いた通りエンリッチド・エアを使ったダイビングは減圧症のリスクをより減らしますが、リスクがゼロになった、という訳ではない点も注意です。

「潜れる時間が延びたー!やったー!!」って言って限界ギリギリまで潜ってれば結局窒素は溜まってリスクも上がるし、もう1つ起こり得る症状である窒素酔いにしても、勿論通常の空気に比べてなりにくいものの、場合によったら酸素で似たような症状が起こるかもしれない可能性があるんです。

調子乗ったらアカン、ということです。

 

エンリッチド・エアを使用する上でのダイビングコンピュータの設定

調子乗ったらアカンので、どの程度の時間潜って平気で、どの程度の水深であれば問題ないか、しっかり管理している必要があります。

で、その管理ですが、今時のダイコン(ダイビングコンピュータ)であれば事前に使用する空気タンクの酸素割合を入力しておけば、その管理をやってくれます。ありがたいですね。

 

設定方法はダイコンによって様々ですが、ここでは一例として、僕が使ってるダイコン、AQUALUNGKalm Plusの設定方法を出しておきます。難しくないっす。

まずは右下の「PLAN」ボタンを押します。

するとPLANの設定画面が表示されます。ちょうど「9」って書かれてるところが点滅しています。

ここで左上の「ADJUST」ボタンを長押しします。

すると見覚えのある「21%」という数字が点滅している画面が表示されます。

これは通常の空気の酸素の割合の数字ですね。

あとは右上・右下のボタンを使ってこの数値を上下させればOKです。EANx32を使う場合は「32」EANx36を使う場合は「36」に設定する、と言った具合です。

この設定さえきっちりやっておけば、どのくらいの時間潜っていられるか、どの程度の水深にいれば良いかをダイコンが管理してくれます。

 

エンリッチド・エアを使ってみた感想とまとめ

エンリッチド・エアのSPを取得した場所、マリンステージ串本さん。エンリッチを使ってもプラスの料金なし!

串本では3本ほどエンリッチド・エアを使ってダイビングさせていただきました。

どれも1時間近く潜ってるダイビングでしたが、少し水深深めな場所にいた際にチェックすると「あ、まだこのくらいの時間いられるんだ」というどことない安心感は確かに感じることができました。

残圧の残り具合はそこまで変わらないものの、どことなく通常のダイビング後に感じる疲労感が少なかったようにも思います。まぁこれはただのプラセボ効果かもしれない・・・笑

 

色々と「気を付けなきゃいけないことに変わりはないよ!」と書きましたが、逆に言えばいつものダイビングと同じように気を付けるべきことを気を付けてさえいれば、出来ることの幅が広がるダイビングになるのは確かです!

「長い時間潜りたいなぁ、けどDECOが心配だなぁ」という方は、取得を考えてみても良いかと思います(^^)

 

ちなみに学科講習の中身は営業妨害になるのであんまし言えませんが・・・

40、1.4、1.6

この辺りは覚えておくと良い数字かも知れないっす!!!笑

 

てなわけで、今回は以上です!

読んでいただき、ありがとうございました(^^)