こんにちは!ダイバーラウンジです。
ダイビングをやってる上で、避けては通れないのが「ダイビング指導団体」という存在。
でもこの「ダイビング指導団体」って、一体全体、どういう存在なのか?どんな団体がどんな風に結成されているのか?どんな感じでダイビングライフに関わってくるのか?
今回はそんな「ダイビング指導団体」の成り立ちやコースの特徴をそれぞれ調べてみました!
この記事の目次
- 1 ファンダイビングにはダイビングライセンス(Cカード)が必要
- 2 ダイビングライセンス(Cカード)を手に入れるには、ライセンス講習の受講が必要
- 3 ライセンス講習の内容は誰が作るの?
- 4 ダイビング指導団体の概要
- 5 PADI (Professional Association of Diving Instructors)
- 6 NAUI(National Association of Underwater Instructors)
- 7 CMAS(The World Underwater Federation)
- 8 BSAC(British Sub-Aqua Club)
- 9 SSI(Scuba Schools International)
- 10 SNSI(Scuba Nitrox Safety International)
- 11 SDI(Scuba Diving International)
- 12 JUDF(Japan Underwater Diving Federation)
- 13 JP(Japan Professional Scuba Diving Instructors Association)
- 14 まとめ
ファンダイビングにはダイビングライセンス(Cカード)が必要
ダイビング指導団体の話をする前に、ちょっとおさらいです。
この記事で喋ってる話と同じ話になります。
ダイビングをする際はいくつかのコースがあるんですが、一般的にダイバーがその特定のダイビングポイントを楽しむ時に使うのは「ファンダイビング」というコースです。
ダイビングショップのウェブサイトを眺めていて、
- ダイビングポイントの名前
- 2ビーチか2ボートか、などの選択肢
この情報とそれぞれの価格が記載されているものは、大体この「ファンダイビング」のコースだと考えて差し支えないです。
僕のブログで「潜ってきました」のカテゴリーでこれまで潜ってきたダイビングポイントを紹介していますが、それらは全て「ファンダイビング」のコースで申し込んで潜っております。
ですが、こちらのコース、残念ながら最初から申し込めるコースじゃないんです。
この「ファンダイビング」に申し込むには、とある条件をクリアする必要があります。
それはダイビングライセンス(Cカード)を所持していること。
ダイビングライセンス(Cカード)とは、「ダイビングを楽しむにあたって、必要な知識とスキルを習得済みである」ことを認定した証として発行されるもので、「Certification Card」を略して「Cカード」と呼びます。
このCカードを所持することで、初めてファンダイビングを申し込み、ありとあらゆる海を楽しむことが可能になります。
ダイビングライセンス(Cカード)を手に入れるには、ライセンス講習の受講が必要
ではそのCカードを手に入れるのにはどうすれば良いか?
それには「ファンダイビング」とは別のコースである「ライセンス講習」を受講する必要があります。
先程書いた通り、Cカードは「ダイビングを楽しむにあたって、必要な知識とスキルを習得済みである」ことを示す証です。つまり、「必要な知識とスキル」を習得しなければいけません。それが出来るのがこのライセンス講習です。
ライセンス講習では、主にこんなことをやっていきます。
- 知識開発(学科講習)
器材や安全ルールなど、ダイビングに必要な知識を教材を通して身に付ける。学科試験もあります - プールダイブ
器材セットアップやハンドシグナルなど、必要なスキルを海に行く前に実践形式で学ぶ - 海洋講習
知識開発やプールダイブでやったことを実際に海で実践する場
初めて講習を受ける場合は、大体最短3~4日でコースを修了し、Cカードを取得することが出来ます(別途知識開発用にテキストを読み込む時間は必要です)。
ライセンス講習の内容は誰が作るの?
ではこのライセンス講習についてなのですが、そもそも誰にどう申し込めば良いのでしょうか?
・・・と言うとその答えは簡単で、ダイビングショップに申し込み、インストラクターからその講習を受けます。
神子元のように流れが速すぎてゆっくり講習なんてやってるような場合じゃない海のショップさんを除くと、ライセンス講習は日本中のほとんどのダイビングショップさんで申し込めるコースです。
フォロワーさんに以前聞いた時にちょっと驚いたのですが、ダイビングを始める際に真っ先にライセンス講習を始める人の方が、体験ダイビングから入る人より多い傾向にあるんですよね。
僕てっきり後者が普通だと思ってました(自分がそうだったし)。
で、ライセンス講習はショップでインストラクターから学ぶのは先述の通りなのですが、講習の内容をショップが一から組んでいるのか?というと、そういう訳ではありません。
そうしてしまうと、受講する場所によって内容が変わってしまうので、ダイバー全体が「必要な知識とスキル」をちゃんとした水準以上に学べないかもしれないリスクが出ちゃいますよね(インストラクターさんが組んだらレベルが低くなるという意味ではなく、やることがバラバラになってしまう、という意味合いです)。
ここで初めて「ダイビング指導団体」という存在が登場する訳です。
「ダイビングを楽しむにあたって、必要な知識とスキル」が何かを定義した上で、それに必要な知識開発、実践で学ぶ講習内容は、すべてこの「ダイビング指導団体」という存在が作っています。てか、何なら前述のダイビングライセンス(Cカード)を発行しているのもこの「ダイビング指導団体」です。
ダイビングショップのインストラクターさんは、この「ダイビング指導団体」によって作成されたカリキュラムに沿ってライセンス講習を行っています。
ダイビング指導団体の概要
前述の通り、「ダイビング指導団体」は「ダイビングを楽しむにあたって、必要な知識とスキル」を学ぶためのカリキュラムを策定しており、それを修了したダイバー向けにダイビングライセンス(Cカード)を発行している団体です。
それだけ聞くと自動車教習所風な公的機関をイメージしますが、ダイビング指導団体は公的機関ではありません。民間団体です。
ダイビングライセンス(Cカード)が正確に言えばライセンス(免許)ではない、というのはこの点で、Cカードはあくまで民間の指導団体が発行している「認定証」であり、免許ではありません。Cカードを持ってないとダイビングが出来ない、という法律は存在してないんです。
「法律でマストって言われてないならCカード無くてもダイビング出来るんじゃない?」
って言われると、実際確かにそうなのですが、とは言えこの「Cカードを取得している」ことへの信頼度はダイビングの世界においては絶大に高いです。
ダイビングって、どうしても海中に潜るので、リスクが無いとは言えないアクティビティです。
ダイビングを本格的に楽しもうと思ったら、そうしたリスクやリスクヘッジを知り、より安全性の高い状態でダイビング出来るようにしたいですよね。
「ライセンス講習」で学べるダイビング指導団体のカリキュラムは、そうしたテーマを勉強するのにめちゃくちゃ最適な内容です。その他にも水中で人体に起こる事象や必要な器材の機能にセッティング方法、ダイビングの計画の立て方など、とにかくダイビングを楽しむために必要な知識・動きを学べる内容になっています。
更に言えばダイビングショップさんやインストラクターもそうした指導団体に会員として所属し、「うちのカリキュラムでダイビング教えていいよ」と指導団体に認定されることで、「ライセンス講習」をサービスとして提供出来ています。
これを一通り修了したダイバーだからこそ、ショップさんも信頼して「ファンダイビング」に連れて行けるわけです。なので結局「ファンダイビング」を申し込むにはダイビングライセンス(Cカード)が必要となります。これは日本に限らず世界中でほぼ同じルールとなっており、中には敢えてCカード保持を法律として必須にしている国もあります(オーストラリアなど)。
して、「ダイビング指導団体」と名乗る民間団体ですが・・・複数存在します。結構います。
グローバルに展開されている指導団体もいれば、その国に特化した指導団体もいたりと、色んな顔を持った指導団体がいたりと、かなり様々います。
「ダイビングショップがそれぞれカリキュラム組んだらバラけるのは何となく分かるけど、カリキュラム組むダイビング指導団体も複数いたらバラけません?」
・・・・・確かに。
ただ、先日Twitterのフォロワーさんのご協力のもといくつかの有名な指導団体のテキストを読み込んでみたのですが、とりあえず知識開発で押さえたい内容やレベルは全体的にとても似ていると感じました。なので、あくまで個人的な感覚ですが、指導団体の違いで教えられるべきものが教えられてないのでは?というのは少なくとも無いと思います。
ではでは、実際どんな指導団体がいるのかについて、片っ端から紹介していこうと思います!!
PADI (Professional Association of Diving Instructors)
- 設立年:1966年
- 本部:アメリカ合衆国カリフォルニア州
- 展開している国・地域:183
- 日本の加盟ダイビングショップ数:471
とりあえず「ダイビング指導団体」と聞いた時にまず名前の挙がってくる、PADIさん。
日本でも海外でもよく見かけるこのPADIロゴ。僕のCカードもすべてPADIさんです。
- PADIに登録しているダイビングショップやセンター・リゾート:世界で6,600以上
- PADIが対応している言語数:26
- PADIに登録しているインストラクター含むダイビングの「プロ」:世界で128,000人以上
- これまで発行してきたCカードの枚数:世界で28万枚以上
・・・って感じで凄まじい数字が並んでおりますが、世界中のダイバーのうち6割以上がPADIでダイビングを始めている、と言われています。
PADIの歴史
1966年にジョン・クロニンとラルフ・エリクソンという2人の人物によって、イリノイ州にてジョニーウォーカーのスコッチを飲みながら新しいダイビング指導団体の構想をし始めたのが、PADIの始まり。
元々ジョン・クロニンはU.S. Diversという器材メーカーの営業マンで、ラルフ・エリクソンは1961年にヒューストンでNAUIのインストラクターになった人物でした。この2人はその1960年にダイビング関連の集まり(後にも登場します)で出会っております。
ウェブサイトに書かれてることをそのまま引用すると・・・2人は、よりプロフェッショナルで、より最新の技術水準を活用し、人がもっと簡単に安全にダイビングを始められるための教育組織を作るべきだ!と議論しまくります。
数度の議論(とジョニーウォーカーのスコッチ)を経て、イリノイ州ナイルズにあったジョン・クロニンの家に小さな本部を作り、お隣さんに秘書のバイトを、息子さんに雑用をお願いしながらのPADI活動がスタートします。起業家ストーリーですな。
後に雑誌「Skin Diver」の編集長になるポール・ティモーリスのアドバイスでCカードにダイバーの写真載せて認知を上げたり、ジョン・クロニンの昇進(U.S. Diversで営業部長になる)と引っ越しに合わせて本部をカリフォルニアに移したりしながら独自のダイバー教育プログラムを作り続け、1980年代後半には世界最大規模のダイビング教育機関の1つに成長していきます。今やたくさんのダイバーが受けるPADIのOWDコースは、1972年にリリースされたものだそうです。
そしてジョン・クロニンは2003年、ラルフ・エリクソンは2006年に亡くなられています。
※PADIの歴史物語の引用元はこちらです。
PADIの特徴
PADIのカリキュラムは
- ダイビングを始める
- ダイビングを続ける(もっと楽しむ)
- ダイビングのプロになる(教える側になる)
それぞれの段階に合わせたカリキュラムが策定されています。
ダイビングを始める上でほとんどの人が一番はじめに受講するオープン・ウォーター・ダイバー(OWD)コースに関しては、テスト付きの学科講習に加えて、
- プールダイブ:少なくとも7〜8時間
- 海洋講習:プールと合わせて少なくとも3日間
この期間をかけたこなすカリキュラムが用意されております。確かに僕もお盆休み3日間使ってOWDを取得しました。
このOWDコースを皮切りに
- オープン・ウォーター・ダイバー
- アドバンスド・オープン・ウォーター・ダイバー
- レスキュー・ダイバー
- マスター・スクーバ・ダイバー
- ダイバー・マスター
- アシスタント・インストラクター
- オープン・ウォーター・スクーバインストラクター
・・・って感じでコースが段階分けで進んでいきます。この中で「ダイビングのプロ」と言われるのは「ダイバー・マスター」より先のコースです。
あとカリキュラムを見てて特徴的だなと思ったのは、スペシャルティ・コースの種類がかなりたくさんあること。
スペシャルティ・コースはダイビングにおける特定のテーマに沿って行う講座のようなもので、ダイバーさんがよく「○○のSP取った!」と言ってるのがそれにあたるのですが、PADIが用意しているスペシャルティの数は他と比べてもかなり多いです。
ボートやディープ、ナビゲーションなどは他の指導団体でも用意されているコースなのですが、PADIの場合は更に流氷ダイビング向けのアイス、高所ダイビング向けのアルティチュード、水中写真を極める水中フォトグラファーなど、実に様々なコースが用意されています。その数27!
また、世界的な海洋保護を目的とした非営利の環境保護組織、Project AWARE財団も設立しており、そこに関連した「海の環境を守りながらダイビングを続ける」ためのマナーなども学べるコースもあったりします。
あとの特徴は、他と比べてテキストが分厚い、ってところですかね。笑
紙のテキストで学科講習をやる場合はこのテキストを読み込む必要がありますが、e-learningでパソコンやタブレットを通して学習することも可能です。
このように広範囲にわたりカバーしながらプログラムされたPADIのカリキュラムですが、世界的にダイビングのカリキュラムの水準を審査するRSTC/ISO(国際標準化機構)という機関から認定を受けているだけではなく、本拠地であるアメリカの教育審議会(ACE)では大学の単位として唯一認められている、といった形で絶大的にレベルが信頼されている指導団体です。
NAUI(National Association of Underwater Instructors)
- 設立年:1960年
- 本部:アメリカ合衆国フロリダ州
- 展開している国・地域:100以上
- 日本の加盟ダイビングショップ数:142
続きまして、NAUIです。
実はPADIより発足は早く設立したダイビング教育組織で、ダイビングそのものが広がった歴史とも関連の深い指導団体です。日本で加盟しているダイビングショップの数はPADIの次に多いです。
NAUIの歴史
NAUIの歴史に関する文章を読んでいると、今のレクリエーションダイビングが広まっていった歴史が大体同時に語られています。
その物語は、フランスの海軍将校であるジャック=イヴ・クストーとガスメーカーであるエア・リキードのエンジニア、エミール・ガニヨンの2人によってダイビング器材「アクアラング」を開発したことからスタートします。もちろんですが、この2人は今もある器材メーカー「アクアラング」の生みの親です。
1949年、当時のアメリカではむしろスキンダイビングの方が盛んに行われていました(文献読む限りですと、どちらかと言えばゴリゴリ肉体派なスキンが当時は流行ってたそうです)。ですがカリフォルニア州のとあるスポーツ用品店(後のU.S. Divers、現アクアラング社)がこの開発された器材の販売を始めたことで、ゴリゴリ肉体派ではない一般の人々にもスキューバダイビングというアクティビティが広まり始めます。
ただ、その当時ダイビングをするために教えられてたことは「潜ってる間は呼吸を止めちゃダメだよ」くらいで、これと言ったレクチャーが出来る団体はなく、地元の同好会が海軍の堅苦しいマニュアル引っ張ってきながら独自で自分たち用のマニュアルを作る、くらいが精一杯でした。今の状況を考えるとおざなり。笑
そんな中で1952年、当時ロサンゼルス郡のスポーツ理事だったアル・テイルマンが郡に対して
「ダイビングがロサンゼルで流行り始めてるよ!ただ地元の海で潜ってると技術が怪しい人を見かけるし、万が一事故になったら大変だよ。群主導でトレーニングプログラム作らない?」
という手紙を送った(もちろんですがこんなにくだけてません。脚色してますw)のをきっかけに、ロサンゼルス独自のダイビング教育プログラムを作るプロジェクトが始まります。
アル・テイルマンともう1人、郡のライフガード部門担当だったベブ・モーガンは、元々非公式でダイビング講習をやっていたスクリップス海洋研究所に出向いて講習を受け、それを基にしたマニュアルを作成し、1954年に第1回の教室を開催します。それが大成功。
「思ったより人気あり過ぎてインストラクター足りなくない?」ということで、インストラクター自体を育成するUICC (Underwater Instructor Certification Course)コースが開催されたり、他の州でもその教育プログラム使いたい!という問い合わせが殺到したりしてるうちに「もうこれは全米レベルでインストラクター育成する組織にしないとダメだよな」となりました。
そんな流れで、1960年、アル・テイルマン、ニール・ヘス(当時雑誌「Skin Diver」でダイビングのコーナーを持っていた人物)、ジョン・C・ジョーンズ.Jr(フロリダ州ブロワード郡の水中指導責任者)などのメンバーが取締役会として名を連ねる形でNAUIが結成され、第1回NAUI ICC(Instructor Certification Course)コースが開催されます。
72人集まったこの第1回コース、「我こそはダイビングのプロだ」という意識激アツの人達が集まっていた様で、喧々諤々な熱い大会になったそうです。ちなみに参加者の中には後にPADIを作る前述のジョン・クロニンとラルフ・エリクソンもいます。あ、更に言うとアクアラングを開発したジャック=イヴ・クストーはNAUIの初代顧問になりました。
※NAUIの歴史物語の引用元はこちら
NAUIの特徴
歴史が長くなってしまいました。ダイビングの広がりとルーツが似ているとなると、どうしても長くなっちゃいますね^^;
そんなNAUIのカリキュラムですが、基本的に枠組みはPADIと同様で「ダイビングを始める」「ダイビングを続ける」「ダイビングのプロになる」それぞれの段階に合わせたコースがこんな感じで用意されています↓
一見PADIと違ってレスキューコースが無いように見えますが、NAUIの場合はスペシャルティの中に組み込まれている感じです。
あと特徴的だなと思ったのは、NAUIの場合はe-learningが無料で提供されていること(学科講習は紙のテキストで学ぶかe-learningで学ぶかが選べます)。もちろんNAUIに所属しているショップでライセンス講習を申し込まないと受講は出来ませんが、お優しい設定になっております。
他にもウェブサイトを見てると、ダイビングに必要なスキルが動画で振り返れるようになってるのが良いですね!
こうしたNAUIのプログラムもPADIと同様にRSTC/ISO(国際標準化機構)という機関からしっかり認定を受けているので、カリキュラムの質は基本的に高いです。
CMAS(The World Underwater Federation)
- 設立年:1959年
- 本部:イタリア ローマ
- 展開している国・地域:130以上
- 日本の加盟ダイビングショップ数:合計434
日本で「世界水中連盟」と訳されるCMASは、フランス語「Confederation Mondiale des Activites Subaquatares」の略。民間団体、正確に言えば国際NGOであり、水中活動の国連とも言うべき団体です。そして更に言えばCMAS自体は指導団体ということではなく、あらゆる指導団体が集まった集合体、という存在です。
CMASの基準でダイビングのサービスを行っているのは1万3000カ所以上と、世界レベルだと大規模に展開されている組織です。
CMASの歴史
そもそもこの水中連盟というのはダイビングに限らずあらゆる水中競技を管理する連盟を指しており、各国に元からそうした連盟が存在しておりました。
※水中競技の一例:アクアスロン、フィンスイミング、フリーダイビング、水中ホッケー、水中オリエンテーリング、スポーツフィッシング、などなど
で、1958年9月28日、ドイツ、ベルギー、ブラジル、フランス、ギリシャ、イタリア、モナコ、ポルトガル、スイス、アメリカ、ユーゴスラビア、各国の水中連盟がブリュッセルに集い、独立した国際組織を結成するための会議が開かれます。そして1959年、フランス(正確に言えばモナコ)でCMASが立ち上がった、という歴史です。
ちなみに初代会長になったのは、ジャック=イヴ・クストー。NAUIだけじゃなくてこの団体も!?
CMASの特徴
CMASは主に3つの委員会で構成されているのですが、ダイビングに関するカリキュラムを構成しているのはそのうちの1つ、技術委員会になります。現在のトップはデンマーク人。
で、各ダイビングショップがCMASの会員になった上でCMASのCカードを発行するための講習を行う・・・かと言うと、ちょっと構造が違います。
CMASは国際組織で、所属している各国の水中連盟がそれぞれの国のCMAS代表になっている、というのが基本構造。日本の場合、日本のCMAS代表を担っているのはJCIA(日本水中活動協会)という組織になります。
そのJCIAに加盟している指導団体にダイビングショップが所属し、CMASの基準に則ってライセンス講習を行っている、という構造です。ちょっと複雑だな・・・
JCIAに所属しているのはこんな指導団体。
- ADS
- CMAS=JEFF(Japan Educational Facilities Federation)
- JCS(日本海中技術振興会)
- KD JAPAN (関西潜水連盟)
- MTES JAPAN(マリンテクノ 一般財団法人尾道海技学院)
- STARS
・・・などなど。ここで講習を受ければ、CMASのCカードをもらえる、という仕組みです。
CMASのCカードですが、料理の1つ星、2つ星、みたいな呼び名が付いてるのが特徴で、
- 1スターダイバー(PADIのOWDに相当)
- 2スターダイバー(PADIのAOWDに相当)
- 3スターダイバー(PADIのDMに相当)
- 1スターインストラクター(PADIのAIに相当)
- 2スターインストラクター(PADIのOWSIに相当)
のような呼び方をします。
とは言え呼び方が違うというだけで、踏んでいく段階はPADI、NAUIとほぼ同じ。ISO基準に認定されているので、こちらも質に関しては基本的に問題なしです。
ただ前述したように同じCMAS配下とは言え指導団体が違うと、受ける講習内容に差異が発生する点は注意しないといけないかもしれません。
BSAC(British Sub-Aqua Club)
- 設立年:1953年
- 本部:イギリス チェシャー州
- 展開している国・地域:86以上
- 日本の加盟ダイビングショップ数:93
エレガントなウェブサイトが目印のBSAC。イギリスで発足し、英国王室との縁が結構深い指導団体です。それだけでなく40,000名を越える加盟メンバーによって構成されている団体で、PADIには及ばないにしても世界的に見てかなり大きな規模なのが分かります。
BSACの歴史
BSAC立ち上げの中心になったのは、起業家のピーター・グージェンと、同僚でジャーナリストのピーター・スモールの2人。
2人は元空軍飛行士が作ったイギリスで一番はじめのダイビングスクールを視察などを経て、1953年に100人のダイバーと一緒に会議を開き、「水中での探検、科学、スポーツなどの活動と、それらの安全性を促進する」ことを目的に創立されました。1955年にはスポーツダイビングの公式指導団体をしてイギリス政府に任命されています。
前述のCMAS発足にも一役買っており、CMASが立ち上がった同年1959年にはジャック=イヴ・クスとーを名誉会長として迎え入れています。ここにも!?
英国王室との関わりとしては、1960年にフィリップ殿下を初代総裁に、1974年にチャールズ皇太子が、2014年にはウィリアム王子が総裁に就任するなどと言った形で関わっています。
BSACの特徴
ダイバーの段階によってランクが変わる点は他の指導団体と同様なのですが、BSACの場合少し呼び方がこんな感じで変わってきます。
- オーシャンダイバー(PADIのOWDに相当)
- スポーツダイバー(PADIのAOWDに相当)
- ダイブリーダー(PADIのREDに相当)
- ダイブディレクター(PADIのDMに相当)
- インストラクター
またいわゆるスペシャリティにあたるスキルディベロップメントコースも用意されているのが、その数がPADIに負けず劣らず豊富です。
一般的に用意されるコースはひと通りあるイメージですが、ダイバー用のトランシーバーである「ロゴシーズ」を用いたコースがあるのは興味深いですね。
イギリスに馴染みの深いBSACですが、講習内容自体は日本の海洋環境に沿った形でBSAC JAPANが作成しており、そのコース単独でISOの国際規格を取得しています。こちらもコースの質は全く問題なし、ということになりますね。
SSI(Scuba Schools International)
- 設立年:1970年
- 本部:アメリカ合衆国コロラド州
- 展開している国・地域:110以上
- 日本の加盟ダイビングショップ数:不明
これまでの指導団体と比べると、設立年が割と最近になる指導団体。
器材メーカーであるmaresの配下に所属するという、珍しい形態の指導団体です。2800拠点、30以上のサービスセンターを持つという、世界レベルで見るとこちらも規模がデカイ。
SSIの歴史
SSIは1970年にロバート・クラークという人物によって設立されています。
元々ロバートはシドニーやネブラスカでダイビング器材を販売する仕事をしていたのですが、後にジョン・ガフニーという人物と共に別の指導団体NASDSを設立します。ですがその後分かれ、一部の同僚と共にSSIを立ち上げます。
その後SSIはNASDSとくっついたり離れたりを繰り返すのですが、最終的にSSIはイタリアのダイビング器材メーカーmaresに買収されます。これは2014年の話。割と最近です。
※SSIの歴史物語の引用元はこちら
SSIの特徴
世界110カ国が加盟してるSSIですが、こちらのカリキュラムもやはりISOの国際規格を取得しており、質は保証済みの内容ですし取得すれば世界中でダイビング可能なものになります。
コースの内容・段階自体はPADIやNAUIと酷似しており
- オープンウォーターダイバー
- アドバンスオープンウォーターダイバー
- ダイバーストレス&レスキュー
- マスターダイバー
- ダイブマスター
- アシスタントインストラクター
- インストラクター
こんな流れになります。
またスペシャルティにあたるアドバンスドスクーバトレーニングの内容も豊富。PADIに負けておりません。
SNSI(Scuba Nitrox Safety International)
- 設立年:1994年
- 本部:イタリア
- 展開している国・地域:165以上
- 日本の加盟ダイビングショップ数:41
並みいる指導団体の中ではかなり新しい部類に入るSNSI。日本に上陸したのも2017年で、本当に最近の話です。
SNSIの特徴
まだ出来て25年とかで歴史とかに関する記述が薄いので、一気にカリキュラムの特徴の話から始めますw
SNSIのカリキュラムにおける段階分けも、基本的にはこれまでの指導団体と同様です。
- オープンウォーターダイバー
- アドバンスウォーターダイバー
- レスキューダイバー
- ダイブマスター
- インストラクター
名称もPADIやNAUIと同じですね。ただ、カリキュラムの内容にいくつか特徴が見られます。
まず1つ目に1つのコースに掛ける講習時間と本数が多いこと。
例えばオープンウォーターダイバーのコースで見た時、PADIの場合は海洋講習は4本潜るのですが(RSTCの基準にもなっている本数です)、SNSIの場合は6本潜らせます。1本1本の最低潜水時間も長いし、フィンワークの技術にこだわりもあるため3,000m泳がすことを基準としています(マリンダイビングの記事より抜粋)
要は、みっちりしごかれる。OWDが終わった頃にはただのダイバーとしてではなく「スキル完璧なダイバー」としてデビューさせることを意識している感じです。
2つ目に、ナイトロックス(エンリッチドエアー)などのスペシャルティがOWDの講習時点で取得可能なこと。大体はAOWDあたりでスペシャルティをやりますが、SNSIは必須スキルとして最初の段階から取得できるプログラムになっています。団体の名前に「Nitrox」入ってるくらいだしこだわりがある印象です。
こうしたSNSIのカリキュラムですが、RSTC/ISO(国際標準化機構)という機関から認定を受けています。何かこだわり的にもそんな感じしますよね。求めるものの高さを感じます。
SDI(Scuba Diving International)
- 設立年:1998年
- 本部:アメリカ合衆国フロリダ州
- 展開している国・地域:100以上
- 日本の加盟ダイビングショップ数:37
こちらも結構新参の指導団体。テクニカルダイビングに力を入れてる指導団体であり、近年徐々に勢いを増してる指導団体の1つです。
SDIの歴史
歴史として長い訳ではないのですがざっくり説明。
そもそも始まりは1994年に、テクニカルダイビングに特化した指導団体TDI(Technical Diving International)の立ち上げに端を発しています。こちらはサイドマウントにナイトロックス、リブリーザーに至るテックに必要なダイビング器材の扱いやケーブ(洞窟)、レック(沈船)などの特別な環境でのダイビングについてより特化した講習内容を作っている団体です。
その内容をもとに、始めたばかりのダイバーが学びたいと思える講習内容も作るべきだ、というニーズのもとで4年後に作られたのがSDIという訳です。
ちなみにこのSDIとTDI、更にパブリックセーフティダイビング(警察や消防などが証拠捜索、水難救助、水中捜索などを目的として行うダイビング)を専門とするERDI。この3団体を束ねるのがInternational Trainingという団体です。
SDIの特徴
SDIのカリキュラムも基本的には他の指導団体と同じような段階で進んでいきます。
- オープンウォータースキューバーダイバー
- アドバンスドダイバー
- レスキューダイバー
- ダイブマスター
- アシスタントインストラクター
- インストラクター
こんな具合。
成り立ちから見ても、テクニカルダイビング専用に教えていた内容を砕きながらはじめの段階のダイバーにも伝えるようにしていることが特徴になります。あとテキストを見ると、ダイブコンピュータを使いこなすことにかなり重点を置いてるイメージです。
こちらのカリキュラムもRSTC/ISO(国際標準化機構)という機関から認定を受けています。
JUDF(Japan Underwater Diving Federation)
- 設立年:1972年
- 本部:日本 東京都墨田区
- 日本の加盟ダイビングショップ数:89
日本語名で全日本潜水連盟という名前の、日本で指導団体として活動する一般社団法人です。
日本にダイビングが広まるにつれて、指導内容を統一しつつ全国的な組織づくりをした方が良いということで、日本潜水会や、JCIAに所属しているKD JAPAN、PADI日本支部などが集まって結成したのがこの全日本潜水連盟です。
今は日本潜水会のみが残って活動を続けています。
JUDFの特徴
日本でのみ活動を行う指導団体ですが、カリキュラムにおける段階分けは、グローバルな指導団体と変わりはありません。
JP(Japan Professional Scuba Diving Instructors Association)
- 設立年:1984年
- 本部:日本 東京都中央区
- 日本の加盟ダイビングショップ数:116
日本のもう1つの指導団体。設立はJUDFの10年後くらい。
調べてて分かったのですが、思ってたより加盟しているダイビングショップの数が多いのが特徴です!CMAS=JEFFより多い。
JPの特徴
JPもカリキュラムにおけるダイバーの段階分けは他の指導団体とほぼ同じです。
あと特徴的なのは、NPO法人であるバリアフリー・スポーツ・ネットワークが運営するSeapassというサービスと連携することで、無料で学科講習を受講できる、という点です。
まとめ
以上、ダイビング指導団体の紹介になりますー!
いや自分で言ってアレですが、本当にいっぱいいました。結構調べるの大変だった・・・
ただこうして見ると、特にグローバルで展開されてる団体はルーツに繋がりのあるような印象が強いですね。そしてどの指導団体もカリキュラムの質にはこだわりがやはりあるので、このカリキュラムを実際に使ってライセンス講習をやるダイビングショップさんがどれを使いたいか次第なのかな、と思いました。
あと、ジャック=イヴ・クストーさんをしっかり調べてみたくなりました。
アクアラングの開発者ってことは知ってたんだけど、ダイビング黎明期のこの方の貢献度半端なさすぎる気がしてきました。
てなわけで、今回は以上になります!
読んでいただき、ありがとうございました(^^)/