こんにちは!ダイバーラウンジです。
今回の記事では、スキューバダイビングの事故について取り上げていきます。ちょーっとネガティブなお話です。
僕や読者の皆さん始め、日々ダイビングを超楽しんでる方が多いと思いますが、一定数の事故が発生しているのもまた事実です。
先日も、沖縄の恩納村、超メジャーなダイビングポイント「青の洞窟」で発生した事故のニュースが発表されておりましたね。
恩納村「青の洞窟」 ダイビング客の女性が意識失いその後死亡〜NHK NEWS WEB〜
ではこれらのダイビング事故が、毎年どのくらい発生しているのかってご存知でしょうか?
今回は発生件数をはじめ、事故の発生原因、こういった事故に遭わないために(ゲスト側としての)我々ダイバーがどんな対策が出来るのか?について深掘ってみたいと思います。
この記事の目次
2009年〜2023年のダイビング事故者数の推移
ダイビングの事故者数についてなのですが、海上保安庁が年ごとの数値を統計しており、資料としてウェブサイトに掲載されております。
そこで集計されていた数値のうち、2009年〜2023年の過去15年間の数値をグラフ化してみます。
青い棒グラフが事故者の総数、オレンジの棒グラフがそのうち死亡・行方不明者の数、折れ線グラフは死亡率になります。
数字が見えづらいので表にも数字を出しておきます。
年度 | 事故者数 | 死亡・行方不明者 | 死亡率 |
2009 | 52 | 14 | 26.9% |
2010 | 50 | 25 | 50.0% |
2011 | 37 | 9 | 24.3% |
2012 | 58 | 22 | 37.9% |
2013 | 49 | 17 | 34.7% |
2014 | 40 | 11 | 27.5% |
2015 | 32 | 11 | 34.4% |
2016 | 42 | 11 | 26.2% |
2017 | 58 | 16 | 27.6% |
2018 | 45 | 17 | 37.8% |
2019 | 41 | 14 | 34.1% |
2020 | 36 | 17 | 47.2% |
2021 | 35 | 7 | 20.0% |
2022 | 42 | 14 | 33.3% |
2023 | 48 | 16 | 33.3% |
過去15年間単位で見ると、事故に遭うのは少ない年で30人ちょい、多い年では60人近く発生している年もあります。そして死亡率は2010年と2020年を覗くとおおよそ3割前後。
2017年以降から2021年まで事故者の数は減っていたものの、そこから最近は増加傾向になっている、というのは心配な点になりますね。
2020年といえばコロナで多くの方がステイホームした年でもあるので、そこから久々のダイビングで事故のリスクが増えてる可能性もあります。
ダイビング事故内容の内訳
2023年の事故者を事故内容で分けるとこのようになっておりました。
最も多いのは溺水で19人。一番多いとは言え、昨年と比較すると7人減っている数値です。
次いで病気で14人。減圧症をはじめ、ダイビング中に発症した病気を指していると思われます。残念ながら昨年と比較すると6人増えてます。
そして3番目の事故内容にして昨年より10人も増えてしまったのが帰還不能の13人です。流されすぎた、ボートから逸れたとかで帰還することが難しくなってしまった事故です。
記憶に残ってるのは沖縄のルカン礁でドリフトダイビング中のダイバーが行方不明になった事故とかでしょうか。
ルカン礁でドリフトダイビング中に一時漂流 糸満市西方沖 7人全員を無事救助〜琉球新報〜
結果的には全員無事救助されて一安心した事故ではありますが、こうしてまとまった人数のダイバーが帰還不能に陥るという事故が多かった1年だと言えます。
ダイビング事故のケース
2023年で発生してる事故はまだ海上保安庁で集計している最中ということもあり、事故のケースや原因に関してはまだ記載はありませんでした。
ので、2020年〜2022年の3年間の資料に書かれてる内容を抜粋してみます。
事故者(60歳代)は、連日でスクーバダイビングを行っていましたが、ダイビングを終え船上に上がろうとした際に、意識を失って溺水しました。 その後、インストラクター等により救助されましたが、重度の肺炎と診断されて入院することとなりました。
事故者(潜水経験:初めて)は、インストラクターを伴って体験ダイビング中にマスクに海水が入ったため、海水をマスクの外に出そうと試みましたが、マスクが外れそうになった際にレギュレーターが外れたことでパニックに陥り、溺水しました。
事故者は、妻と友人の3人でボートダイビングツアーに参加していました。事故者の妻は、空気ボンベの残圧が少なくなったことからインストラクターと安全停止位置へ移動し、その間、事故者と友人は水深15メートル付近で待機するよう指示を受けていました。しかし、事故者はインストラクターの制止を振り切って急浮上を始め、海面浮上しました。事故者は、海面浮上後に意識を消失し、搬送先の病院で死亡が確認されました。
マスククリアでパニクったり体力使い過ぎて体調に異変を喫したり突然の急浮上で意識を失ったり・・・などなど、色んなケースが発生しているのが分かります。
更に2020年に発生した事故の一部はDIVERにてその詳細が記載されております。ざっと下に貼り付けます。
ダイビング事故の原因
掲載されているダイビング事故のケースは色々とありますが、ざーーっと眺めていると、原因はおおよそ以下に分類されてきます。
- 潜水中の急激な体調の変化、意識喪失
- 途中でガイドからはぐれる、ロストする
- 器材トラブルによるパニック(マスク、レギュレータ、タンクのバルブなど)
- エア切れ
- 上記いずれかの事象を起因とする急浮上、減圧症
これ以外の原因ももちろんありますが、これらの事象に対する対策をしておけば、自身のダイビングの安全性をかなり上げられそうですね。
というわけで出来そうな対策について1つ1つ見ていきましょう!
ダイビング事故への対策①:事前の体調管理を徹底する
事故のケースの中には潜ってる最中、または潜り終わった直後に突然体調不良になって意識を失う、といったケースが散見されておりました。
こうなるリスクを少しでも減らすため、体調を万全にしてダイビング当日を迎えることは
鉄則です。
ダイビングではあらかじめ
- 安全上、はじめからダイビングが許可されない可能性の高いケース
- 医師の許可・診断書が必要なケース
といったものが指導団体によって定められており、これに該当する健康状態・病歴がないかを確認する、割と長めのリストの質問表が用意されております。
これにしっかり回答できるように日常から自身の体調を管理できているだけで、思わぬ体調の急変をいくらかの割合で防げるはずです。
それに加えて、ダイビング前にわざわざ体調不良を起こしかねない行動をしないこと。
前日に飲み過ぎて徹夜、とかダメ絶対。
ダイビング事故の対策②:無理をしない
①と似た話になりますが、突然体調不良になる系のダイビング事故のケースは、年齢層が高めであることが多かったです。
体調不良にならないように日頃から気を付けたって、感染症だの蔓延してる世の中、どうしたって運悪く当日体調を崩してしまうこともあります。
そんな時は無理せず休むべし。
事前に予約してショップさんに準備してもらった手前、当日体調が悪いからと言ってキャンセルとか言い出しにくいとは思います。ですが、当日取り返しのつかない事態に陥るより100倍マシです。事情をちゃんと説明して休みましょう。
潜ってる間に「体調変かも?」と感じたら
万が一、潜ってる間に「体調、ヤバイかも?」と感じたら!
とにもかくにもまずは周りのダイバーやガイドさんに伝えるようにしましょう。
上図の頭から胴体まで楕円を描くように手を回す動き。
これは「体調が悪い」を伝えるハンドシグナルで、割と最近新たに導入されたものです。これを使って周りに体調不良を伝えましょう。
他にも水中の寒さがきつかったら「寒い」のハンドシグナルを送ったり
他に体調にしろ器材にしろ何かしら不調を感じた時に「問題あり!」のハンドシグナルを送ったりと
色々と使えるハンドシグナルがあります!「体調が悪い」のハンドシグナルのように最近導入されたハンドシグナルもあるので、いざとなった時に使えるよう、定期的に振り返っておくようにしておきましょう!
ダイビング事故の対策③:周りのダイバーの位置を常に把握する
事故のケースの中では流れの強いドリフトポイントで行方不明になったり、体験ダイビングやライセンス講習の合間にはぐれてしまう、などのケースも確認できました。
バディ制が基本のダイビングにおいてはぐれたり孤立したりする状態はパニックを起こしかねないですよね。そうならないためにも
他のダイバーやガイドさんの位置は常に把握しとくべし。
小さい生き物を撮影するマクロダイビングをやってたり、大きい生き物が動き回る光景を見上げてたりすると、意外にめちゃくちゃ視界が狭まってたりするんですよね。
そしてふと気がつくと周りにダイバーは誰もおらず自分ひとり・・・とか・・・
そんなことにならないように周囲の様子は常に気を配っておくようにしておきましょう。
ロストしたら
万が一、万が一周囲をはぐれて「あ、俺ロストしたな」という状況になった場合。
ロストが発生する可能性はゼロではないので、起こった時に備えてガイドさんや周りのダイバーと事前に手順を決めておきましょう。その辺りは潜る前のブリーフィングで必ず話が出てきます。
手順を決めておきましょうとは言ったものの、大体共通して決まってたりもします。つまり
1分間その場で待ってみて、誰も来なかったらその場で浮上
これですね。このお作法を焦らず、落ち着いて行うことが大切です。
※ポイントによって違う手順が決められている場合もあるので、この流れはやはりガイドさんと事前にやりとりして決めておくようにしましょう。
ダイビング事故の対策④:マスクトラブル防止!
事故のケースで毎年確実に取り上げられていたのがマスクトラブルによるパニックです。
マスクに海水が入ってきて焦る、海水を出そうとして慌てすぎて焦る、などなど。このマスク絡みのケース、結構多く見受けられます。
これらのケース、いずれもOWD(オープン・ウォーター・ダイビング)の講習の序盤で必ずやるマスククリアのスキルが出来ていれば絶対にパニックになりようがない話です。
なのでいざという時に慌てず出来るよう、マスククリアのスキルは定期的に復習しておきましょう!
ダイビング事故の対策⑤:レギュレーターのトラブル防止
レギュレーターはダイビングをする上でダイバーの生命線とも言える最も重要な器材になりますが、これが何かしらの要因で口から外れてしまい、息が吸えなくなってパニックを起こしてしまう、というケースもあるようです。
まずレギュレーターについて事故を防ぐために第一に言えることは
始まりから終わりまで口から離すな
ということです。
特に「終わりまで」の部分が大事で、梯子を使ってボートに上がる時にレギュレーターを口から外しちゃったりしておりませんか?その途中で波に煽られたりして海にまた落ちちゃってパニクる、なんていうケースもあるそうです。なのでボートの中に乗り込むまで咥えておくべしレギュレーター!!
レギュレーターが口から離れたら
万が一水中でレギュレーターが口から離れてしまったら、必ず使うスキルがレギュレーターリカバリーとレギュレータークリアです。
これもマスククリアと同様にライセンス講習の序盤で学ぶスキルです。と同時に、突然やれ!と言われたら焦るスキルでもあったりします。こちらも定期的に復習しておきましょう!
ダイビング事故の対策⑥:防ぐべし、タンクバルブ未開放
潜降を始めながらいざレギュレーターから空気を吸ってみたら全然入ってこない。つまり、空気タンクが開いてない!?こんな状況、超焦りますよね。
あってはならないタンクバルブ未開放。でもなぜかありがちタンクバルブ未開放。あなたもさぁダイビングだ!と意気揚々とセッティング済みの器材を背負った瞬間悟ったように「タンク・・・開けてないわ・・・」ってなったこと、ありませんでしょうか?
そこで気付けていればセーフっちゃセーフですが、うっかりそのまま海に飛び込んでしまったら大変です。そうならないための3ステップです。
- そもそも器材を背負う時にタンクバルブをチェックする
- バディチェックを通してタンクバルブをチェックする
- エントリー前にレギュを咥えて2、3回呼吸する
特に3つ目が最終ラインですね。
実際に呼吸しながらゲージを見たらゼロになってたり激しく動き回ったりと、異常な動きを見せたらタンクバルブがおかしいということになります。タンクバルブが開いてないか、中途半端にしか開いてない可能性が高い!!開けれーーー!!!
ダイビング事故の対策⑦:起こすなエア切れ
ダイビング終盤にエア切れを起こすことでパニックを起こして事故・・・なんていうケースも見受けられました。
基本的にダイビングにおいて、エア切れは起きるべきではありません。
ダイビングしてる最中に空気が吸えなくなって呼吸できなくなった!なんて状況は本来起きてはいけないのです。残圧200でスタートして、50か60くらいは残して帰ってくるべきです。
ではどうやってエア切れを防ぐべきなのか?答えは1つです。
申告する。これに尽きます。
ブリーフィングで「残圧が〇〇になったら教えてください」ってガイドさんに言われますよね?これはガイドさんがダイビング中の行動計画(どのタイミングで安全停止するために帰るか、など)を立てるために重要な情報なのです。
ガイドさんはそれぞれのタイミングでゲストの残圧はチェックしていますが、上記の残圧になっても気付いてなさそうであれば掴まえてでも申告しましょう。
え、周りよりエア消費が早いから言いづらいって?事故るより100倍マシだからちゃんと言いなさい。
ダイビング事故の対策⑧:急浮上、ダメ絶対。
マスクに海水が入ってきた、レギュレーターが外れた、エアが切れた・・・この現象により焦ったダイバーはパニックになると、空気を求めて急浮上しがちです。そして、意識を失う。こういったケースが資料からも散見されます。
急浮上ダメ絶対。何も良いことが起こりません。
急浮上したら意識を失った・・・これは減圧症の中でも特に重い症状が発生してしまっている状態になります。
減圧症に関するマニュアルを読んでいると、深い水深はもちろん、浅い水深での急浮上は問答無用で厳禁という記載をたくさん見ます。
どんなにパニックになろうが、急に水面に出てはいけないのです。急浮上ダメ絶対(2回目)
水中でトラブルが起こったら、確かにパニックになって水上の空気を求めたくなりそうです。ですが、水中のトラブルは水中で解決できる可能性が高いです。慌てずに、周囲のダイバーさんにちゃんと状況を共有しながら解決させていきましょう!
ダイビング事故対策チェックリスト
ここまで8つのダイビング事故対策について書いてきました。
リストにしておきます!
皆さん確認しましたか!?
守れそうですか!?
守りましょうね!!!
もちろんこれだけで100%安全なダイビングが出来る!とは言い切れません。安全に関することは常に学習して知見を広げていくしかありません。
ダイビング事故を着実にゼロにしていくためにも、上のリストをはじめ僕たちゲスト側が気を付けられることを踏まえ、ガイドさんと一緒により楽しいダイビングを目指していきましょう♪
てなわけで今回はここまでです!
お読みいただき、ありがとうございました^^