こんにちは!ダイバーラウンジです。
少し久々な更新となってしまいました。
6月に第一子が誕生してから子育てに追われる日々が続いております。やはり子育てが始まってしまうとなかなかブログ更新に労力を割けないものですね。当然ですが。
そんな日々の合間を縫って奥さんから許可をいただき、先日山口の海にダイビングに行ってきました!
何を狙うかというと
戦艦陸奥!
かつて第二次世界大戦が始まる前に建造され、世界の7大戦艦に数えられていた戦艦が沈む海でのダイビングです。これまでのダイビングとは一風変わったアドベンチャーダイブです。
沈船ダイビングはこれまでも幾度か経験自体はあって、熱海に沈む旭16号、沖縄の古宇利島に沈む米軍の駆逐艦エモンズなどを見てきました。
どちらも日本の海に沈む沈船の中では巨大サイズで、旭16号は全長81m、エモンズは全長106mあります。
ですが戦艦陸奥の全長はそれを遥かに上回る225m。デカすぎるぜ。
そんなスケール段違いの沈船に挑んできました!
いざ山口へ
さぁ目的地に向かってきます。
今回は所用あって大阪からスタートです。新幹線で山口県の徳山駅まで向かいます。時間にしておよそ1時間40分ほどになります。
そこから更に在来線に30分ほど乗って・・・
到着しました、山口県柳井駅です。柳井市は今回の滞在地になります。
思えば遠くへ来たものだ・・・多分同じ時間かけて沖縄も行けるし海外も行けるかもしれない。
柳井市の伝統的な民芸品、金魚ちょうちんが訝しげな視線をこちらに向けてきます。
そして今回一緒に潜る人たちと無事合流&乾杯!!
久々に一緒に潜るやすまさん(@yasumatk)とごーくん(@goooowwww)、そして今回誘ってくださったよしたかさん(@yosh_marine)!以前テクニカルダイビングの体験講習を受けた時の講師さんです。
決起会をやりながら、明日出くわす戦艦陸奥に向けて作戦会議を立てます!
戦艦陸奥とは
これは勝手な思い込みかもしれませんが、ひとえに「戦艦」と聞くと思い浮かぶのは「大和」や「武蔵」といった名前ではないでしょうか?
しかし日露戦争が終わって太平洋戦争に突入していく中で、日本海軍が中心に添え、国中で知名度が高かった戦艦こそが「陸奥」であり、「長門」でした。
1918年に作られ始め1921年に完成した「陸奥」は、1年先に出来た「長門」と同型の戦艦として世に誕生しました。
当時「あんまり強い艦を日本に持たせたくないなぁ」という思惑から、建造中の段階で他国から陸奥の廃艦が企まれたり、その目をどうにかこうにか掻い潜って建造を進める、という政治的な生々しいぶつかり合いを経て造られた戦艦陸奥。
この時点で16インチ砲塔(砲台の口のデカさが直径40cmある砲塔。つまり超でかい)を搭載した戦艦が「陸奥」と「長門」を含めて世界で7艦しかなかったため、ビッグ7と呼ばれていました。
最大速力は26.7ノット(1時間に約50km進む速さ)の高速。当時世界でも最強のスペックを誇る戦艦が陸奥でした。
そんな最強スペックの戦艦陸奥なのですが、その生涯において戦局にがっつり参加することは結局ありませんでした。
太平洋戦争が始まり、ミッドウェー海戦などで作戦参加はしていたものの、そこまで前線に参加することなく主力艦として温存されておりました。
そして1943年6月8日、当時海軍が拠点にしていた山口県柱島の停泊地にて、朝から艦上訓練を行っていた戦艦陸奥はお昼時、砲台の下の弾薬庫が原因不明の大爆発を起こし、ものの2, 3分で爆沈しました(あらゆる書籍で「沈没」よりも「爆沈」て書かれていることが多いことからその爆発事故の凄まじさを感じさせます)。
この時戦艦陸奥に乗っていた乗船員は1,474人。陸奥の爆沈後、他に停泊していた戦艦に助けられたのは353人。つまり残りの1,121人、乗船員の実に3/4が沈む陸奥と運命を共にしたことになります。
弾薬庫の大爆発の原因は、今でもはっきりとは分かっておりません。
戦後、遺族会の強い意向によって遺骨の回収と大規模な沈船の引き揚げ作業が1970年に開始されました。その結果艦体の3/4が引き揚げられ、多くの遺骨が回収されました。
が、オイルショックの勢いを喰らって引き揚げ作業を中心で動かしていたサルベージ会社の経営が悪化したことを受けて引き揚げ作業が中断。こうして残された船体が、今まさに海に沈んでいるものというわけです。
引き揚げられた艦体の部品の一部は陸奥記念館はじめ、広島の海上自衛隊の学校や東京の船の記念館などの施設で展示されています。
そのうち主砲1門は、陸奥が建造された横須賀のヴェルニー公園に展示されています。横須賀のデートスポットに長さ18mの主砲が展示されています。
いざ沈船ダイビング
戦艦陸奥の前情報を入れたところで、早速挑んでいきましょう!!
今回お世話になったのはLove & Blueさん!
普段は周防大島を中心に瀬戸内海の海を紹介されており、戦艦陸奥の調査も積極的に進めていらっしゃるダイビングショップさんです。今回のダイビング用に船を出してくださいますー!
はい、こちらの船に乗ってポイントまで向かいます。
柳井港からポイントまでは少し遠く、船で約1時間の旅路になります。
こちらが船内の様子。
瀬戸内の海は比較的穏やかで波もそこまで無く、船内は冷暖房が完備されている快適スペース。ポイントまでの1時間、ほぼ寝て過ごしていました(笑)。ただし船内はドライエリアでトイレも奥にあるので、ウェットスーツを着るタイミングはよく考えないといけません。おしっこ漏れちゃう。
ポイントに向かう間にポイントマップをチェック。
戦艦陸奥は船底を120度上に向けた状態で沈んでいます。そして主砲エリアがあり、艦橋エリアがあり、というルートがそれぞれにあります。
マップの記載を見れば分かる通り、深いです。最大水深は38mを超えてくるダイビングになります。テクニカルではなく通常のファンダイビングのため、滞在時間はとても短くなります。その間にどんな光景が目に飛び込んでくるのか、シミュレーションしておく必要があります。
さぁさぁ、戦艦陸奥の眠る海に潜っていきましょう!
アンカーロープを辿って潜降していきます。
ロープは戦艦陸奥のキール部分(船の横揺れを防ぎ安定化させるためのパーツ)に付けられています。この時点では水深はまだ14mくらい。
イソギンチャクがついた砂地がずっと続いてるように見えますよね?
実際は船底です。上にひっくり返ってるってやつですね。
長すぎて先が見えん。。
透明度はこのキール部分で大体10mいかないくらいかな?基本的に夏はそこまで良くない透明度も、この日は結構良いコンディションでした(ガイドさんから「透明度はそこまで良くないですよ」とブリーフィングされた際は「まぁ我々伊豆ダイバーですから・・・」みたいな反応してしまいました)。
とはいえ油断したらあっさりロストしてしまう危険性に変わりはないので、注意しつつ先へ進みます。
切断されたような断面部分から深場へ進んでいきます。
この箇所が切断されたようになっているのは爆沈事故の影響ではなく、引き揚げの際に実際に切断しながら作業を進めていたことによる名残です。
プチ情報ですが戦艦陸奥に使用された鉄は放射線を通さない良い〜〜鉄らしく、引き揚げられた船体の一部は原子力発電所や研究所で使用されています。
しっかし深いなぁ。切り立った側面を下っていくので、水深も一気に深くなります。
水深30m付近。何かが見えてきました。
浴槽です。
年月が経って浴槽の大部分は崩れており、四角い枠が残っているような形です。
士官クラスの部屋が多い部分で見つかった浴槽であることから、士官が個々人でお風呂に入れていたことが推測されます。
マップ上で見ると黄色い点にあたる場所ですね。
キール部分からエントリーし、船底をずーっと辿って断面から降りてきました。マップが頭に入ってると現在地が分かりやすいですね。
さらに深く潜ると、土管のような長い筒が見えてきました。
これこそがビッグ7と言われた戦艦陸奥の4つあるメイン砲台の1番目にあたる第一主砲になります。
でっっっっっっっっっっっかい、でした(語彙力)。戦争での実用を考えて装備された16インチ砲塔。実際目にするとその迫力に圧倒されます。
何せ18mもの長さのある砲身です。
砲身全体が視界に収まらないので、この動画みたいになめるように映してくしかありません。
砲塔の先っぽに落ちてるこちらは、暴発を防ぐための主砲の蓋です。
「先っぽらへんにフタ落ちてるんですよ〜」ってブリーフィングされた時は「へ〜」という感じでしたが、こうして本当に落ちてるのを見ると「へ〜」から「お〜」になる。
やすまさん撮影による、主砲の動画撮ってる途中の僕、の図。
砲台の全体感が分かる良い写真!人間ちっちゃいっす。
そしてすぐ近くに何やら丸い何かが落ちています。
こちらは戦艦に積まれていた洋式便器です。
なぜか奥さんから「沈船に潜りに行った時いつもトイレ見てるイメージある」と言われたのですが、多分トイレを見たのはこの時が初めてです。
別ルートでは艦橋エリアに行きます。
ここには艦橋に搭載された装置がたくさん落ちており、この沈船が戦艦だった証拠をたくさん見ることが出来ます。ただ深いのと船体に隠れてることもあって結構暗く、気抜いたらすぐ見逃しそうなのでよーく目を凝らして色々観察する必要がありました。
ひゃーー、ハレーションすごいなー。視覚確保するの大変です><
ガイドさんの指し示す方向に何やらY字型の何かが見えてきました。
これは遠くを見張る際に使う双眼鏡の台座です。Y字っぽいところにちょうど双眼鏡を差し込む仕様ですね。今の時代に展望台である台座と似たような感じです。
そのお隣にそびえ立つ塔のような長い棒。
これは測距儀という装置になります。
測距儀が何かと言うと、三角関数を用いながら目標との距離を測るのに使用された装置です。
長距離射撃を行う戦艦には必須の装備で、長ければ長いほど誤差が少なくなると言われています。この戦艦陸奥に搭載されているのは4.5m測距儀と10m測距儀。このそびえ立つ棒は10mの方になります。
三角関数は生きていて使ったことあんまり無かったですが、こういう時こそ生きるのですね、サインコサインタンジェントは(測量の世界では普通に使ってそう)。
艦橋の補助柱。
4.5m測距儀。
電線ケーブルを引くのに、もしくは艦内のエレベーター用に使われてたと思われる滑車。
その滑車の奥に見えるのは2kw信号桁。いわゆる「Z旗」とかを掲げる用の信号ヤードです。
ぽっかり空いたスペース、ガイドさんが照らしてくださってますね。
この通り中が覗けます。ほわぁ・・・
何に使われたスペースかは分かっていないそうです。何だかケーブルがたくさん集まってるようには見えますね。
というわけでね、えっとね、もう圧倒されてましたよね。
この沈船に確かに人が乗ってた跡、戦艦だった跡がしっかりと残っていました。
船体の大半は引き揚げられ、残っているのは1/4程度だというのに、それでいてこのスケールか・・・ってなってました。凄まじいです。
お魚を観察しながら戯れるいつものダイビングを「生」のダイビングとしたら、かつては確かに動いており、今は役目を終えて海の底に沈むこの戦艦陸奥のダイビングはまさに「静」のダイビングでした。「静」のダイビングならではの荘厳さを感じる1日でした。
- 通常のファンダイビングの場合は2名以上の参加で船が出ます
- 水深の深いダイビングのため、はじめて参加する場合は1本目は戦艦陸奥以外のポイントでチェックダイビングを行う可能性があります
- テクニカルダイビングでの参加も可能です(むしろこっちがメイン!)
テクニカルの場合は1名からの参加で船が出ます! - その他気になる点はLove&Blueさんに聞いてみてください
男4人の沈船ダイビングの旅!
ちょっといつものダイビングとは違う「静」のダイビングでしたが、このメンバーですごく楽しませていただきました。メンズ4人衆!!
安全停止の手前でちょっと粘ってキール辺りで遊んでるの楽しかったです^^
ダイビングの中日ではごーくんの一押しでいろり山賊なるものに行ってきました。
山の中腹を車で上ってると突如現れるお食事処。山口県の人であれば知らない人はいない観光名所だそうです。
そしてやすまさん、もとい「桃色やすまさん」のリサーチで「HOSHI FRUITS」というカフェに行ってきました。
おしゃれそうなカフェですね!
ヌン活中のおしゃれな女性がいっぱいのカフェに海上がり半袖短パンギョサンの男4人が乗り込む図を想像してください、大体そのイメージ通りの図だったと思います。
このカフェの横にちょっとおしゃれなギフトショップがあるのですが、皆さんから出産祝いとしてお子様用のおもちゃを買っていただきました!
息子大変気に入ってます、大変ありがとうございます!!
てなわけで戦艦陸奥編、完!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました^^
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